福島県教育センター所報ふくしま No.25(S51/1976.2) -016/026page
これは福島市立D小学校2年N組の結果から重要関連小間10問について,尺度解析表にした―部である。
この表によって,学級の学カの構造をは握したり,個人の理解状況の内差異を明確にすることができる。 ―般に学カ検査の分析方法として,誤答分析があげられる。これは正答以外に,どんな誤答をしているかをみるもので,誤答の傾向から誤答の原因や指導の欠陥を見いだそうとするものである。誤答の内容は必ずしも―定でなく,各種の内容を含んでいるのが普通である。学習指導に役立てるためには,どんなまちがいによって,誤答になったか調べることが必要である。
しかし,すべての誤答について分析することは,作業量から考えても,信頼性から考えても困難が多い。小間のねらいや,内容の上から考え,分析の必要あるものを見定めて行い,無意味な誤答にほんろうされないようにするのがよい。こんなとき,有効な誤答を抽出するのに尺度解析表を用いると効果的である。
まず,分析する適格者を選ばなければならない。これには混入率によって,受検者が自分の能カ即応の正常な応答をすることができたかどうか判定しなけれぱならない。混入率二((個人別困難度曲線より左のXの数十困難度曲線の右の○の数))÷(調査問題の総数)X100
いま受検番号40と2の二人の反応を1(四角1)―18の小間でみるならば,二人とも誤答であるが,質的にはかなりの差がある。つまり受検者番号40の誤りはほとんど解くことができるところまできていながら解けなかった誤答であり,受検番号2の誤りは,困難度曲線からの距離からみても,能カの程度からいっても,ほとんど解法もわからないであろうから,でたらめに解答した誤答を分析しても有効な情報は得られないと考えてよい。
また整理上,誤答率と無答率も求めておくのがよい。誤答は解答した結果,誤った反応をしたものであり,無答とは少し意味が異るものである。特に選択肢による反応結果から,くわしい選択肢の誤答分析をするときなどは,誤答の内で,どの選択肢を選んだものがどんな割合になっているかを調べることになる。
正答率の場合には正答者の申に,でたらめ回答して正答になったものも入っているので,次の式で修正し真の正答率をもとめることになる。
真の正答率=(もとめた正答率)―((100―もとめた正答率)十(選択肢の数―1))でもとめる。このように真の正答率をもとめて考察することは,過大な判断のもとで,指導が進められるという欠陥を防ぐことになる。学カの内容を分析診断し対策をたてようなどとするときは,この修正が絶対に必要である。
ここでこの尺度解析に示した10コの小間を関連表で分析してみると上欄の左の小間は右の小間の先習的基礎的事項となっている。ただ1(四角1)―13,3(四角3)―3―(8),3(四角3)―3―(5)がそれぞれ別個のものとして,又5(四角5)―4―(1)5(四角5)―4―(3)も同様に,―方が別の方の基礎になっているというような関係にはなっていない。
5(四角5)―5―(3)は,県とは,かなりちがう反応を示しているが,これなども5(四角5)―2―(2),2(四角2)―2,2(四角2)―4―(4)2(四角2)―3―(2)などの関連を分析することにより―つの問題の所在が明らかになる。この小間を関連表から診断すると図―4―(4)(dlとlとの単位関係)が,2(四角2)―2(dlを使う場合の識別の知識)の先習的基礎となっているというような変なことが,とりもなおさず,5(四角5)―5―(3)に大きな影響を与えている。問題の素材によるものも大きいが,学習上反省しなければならないことを考察できる。
6.採点について 子どもと二人で採点
教育は理論より実践が優先する。教育の実践は個々の特徴を知り.特徴にもとづいた適切な指導を行うことである。個々の特性を知るためには診断的で標準化されたテストを利用するのがよいことは論をまたない。しかし教育実践の場は,あまりにも多忙の中にあるため,診断テストを実施しても,その採点,分析を第三者に依頼し易いことは,―つの問題点である。
どんな子でもテストがあるなら―点でも多くとりたい,授業なら少しでもよくわかりたいと思わないものはないだろう。そんな子を―人ずつよび,その子のテストを―緒に採点し,つまづきの原因診断や激励をしてやれば,テストに対する姿勢も変る上に,心の結びつきもかたくなるものである。更に多忙な申の採点であるだけに,通りいっへんの活用で終ることはなくなるのではないだろうか。
7.むすび
教育に特効薬はない。本県テストを活用することにより,個人のもつ理解状況の欠陥を発見,その原因を探索して,そこに治療の手を施す,そして子どもに本当の学方を身にっけさせていく。そんなときの―助になればと念ずるものである。
参考文献
算数指導書(文部省) 教育診断法(佐藤工著)