福島県教育センター所報ふくしま No.26(S51/1976.6) -004/034page
か。仕事といっても,るす番をしていただくだけのことですけれど。」と言った。男は,どこで 17 働く のも同じだと思って「では,そのようにお願いいたしましょうか。」と,その 18 家 で 19 働か せ〜
略
男は,自分の 20 うち のことも心配になってきて〜
略
「そうですか。 21 うち のことが心配とあれば〜」と言って,こころよくひまを 22 出し て 23 くれ た。そうして,お礼の印にと,お金の包みを 24 くれ た。
男はとうげを下り 25 国 へ帰っていった。 26 うち に着くと,つまにもお金の包みを見せ,〜
略
おまえさん,これは,一年や二年働いて 27 手 にはいるものではないんだぞ。〜
略
男の 28 家 のとなりに,よくばりのおやじさんが住んでいた。この話を聞いて, 自分も一文銭を 29 手 に入れたいものだと思った。そこで,三国とうげをさして 出かけていった。そうして,前の男と同じようにして,美しい女の人の 30 家 をさがし出し,そこで働かせてもらうことになった。
略
そこで,女の人のるすをいいことにして,いちばん 31 手 前の倉から順々に 戸をあけてみることにした。
略
夏らしいけしきで,青い海が広がり,岩の 32 上 に白いかもめが飛んでいた。
略
まつの木に雪がふり積もり,雪の 33 上 をうさぎがはねていた。
略
そのとたん,ここにあった四つの倉も,向こうにあったりっぱな 24 家 も, いちじに,ぱっと消えてなくなってしまった。
略
どこをどう行けば自分の 35 家 の方なのか,さっぱりわからなかった。 (うぐいすの宿)
光村 4下 P.65〜P.74
以上のとり出した単語について,次のような意味拡大の学習をさせることができる。
単語 学習させたいこと 1,2,25 25,国が越後や村を意味しているということで,生まれ故郷を意味することがあること。 (3),(5,9)(6),(11,13,14,23),(24) (季節終り),(陽が沈んでしまう),(慣用句で,あることに悩んで考えがそれで一杯になる。 )(補助動詞,自分・他人のために特にその動作をする意を表す。)(あたえる)の比較をさ せること。 4,10 (ある所からある所へ行く)(へやにいれる)の比較をさせること。 7,12 (はじめる),(ものを人にすすめる,提供する)の比較をさせること。(7は補助的用法) (8,34)(18,28,30,35),(20,21) (建物としての家),(住居というような,建物に付随する人,庭,商売などを含めたやや抽象的な家),(家族,家庭を中心としていう場合の家)の比較をさせること。 (15,17,19)(16) (労働そのもので,ある仕事をすること),(仕事という意味あいが強く,職につくというようなこと)の比較をさせること。 (27,29)(31) (自分の所有物とする場合のもの)(自分に近いほうという場合のもの)の比較をさせること。 32,33 32は上空,33は表面で,それが「飛んでいた」や「はねていた」で決定されていること。 6.おわりに
子どもの語いを豊かにするひとつの方策として,語いの意味の拡大をはかることを提案し,そのために教材を活用する方向を示してみた。ここでは,同一教材の中でどれだけ意味の拡大をはかれるかをのべたが,学年をこえて,一つの体系の中で意味の拡大をはかる指導がなされるなら,さらに子どもの語いは豊かになるであろう。
たとえば,「目をまるくする」という慣用句は,「ほかのじどう車が 1. 目をまるくし ました。(光村,1上,赤いスポーツカー)」,「〜と,りすは 2. 目をまるくし ていいました。(光村,3下,いっぱいでひとり)」 の場合,1.は,「無鉄砲さに対してびっくり」,2.は,「相手が何も知らないのにあきれている」, 3.は,「ないと信じていたことがあることを知って驚嘆している」という意味としてとらえる ことができる。そこで,この三通りの意味を学年をおって比較しながら学習させれば, 意味の拡大は,じゅうぶんはかっていける。
このように,ある学年で意味の拡大をはかる語いと, 学年の進行につれて意味の拡大をはかる語いとを体系的 に整理し,指導計画の中にとりいれていくことが,「語 いが貧しい現代っ子」という声に対する国語科教育の解答 であろうと考えるのであろう。