福島県教育センター所報ふくしま No.26(S51/1976.6) -005/034page

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小学校教材

水生植物および糖葉を用いた光合成の実験

第2研修部  深 沢 一 栄 

1.はじめに

 光合成の実験材料としては,従来アサガオやクワなどが用いられてきたが,最近ではこれらの実験材料に代って,アオミドロやクロモなどの水生植物が多く用いられるようになってきた。また,いままではほとんど用いられなかった単子葉植物も,糖葉を用いた光合成の実験材料として取り上げられるようになってきている。光合成の実験におけるこのような実験材料の変化は,単なる素材の変化ではなく,緑色植物の有機化合物生成を理解させる過程とも深いつながりを持っている。

 水生植物は,陸上の植物に比ぺると条件のコントロールがやさしく,また,BTBやインジゴカーミンのような指示薬を用いて,簡単に気体の出入りを調べることができるという点でも,扱いやすい実験材料である。

 水生植物を用いた実験は,葉緑体中にデンプンができることを確認する実験,二酸化炭素の消費に関する実験,酸素の放出に関する実験に大別される。いずれも,緑色植物の有機化合物生成を理解させるために重要な意味を持つ実験である。特に,二酸化炭素の消費に関する実験と酸素の放出に関する実験は,光合成の概念形成をはかるだけでなく,条件統一や対照実験などの科学の方法を指導する点でも大切な実験である。

 ここでは,水生植物を用いた実験の一つとして,インジゴカーミンを用いた酸素の放出に関する実験を取り上げ,実験法および条件の統一について考察を加えてみたい。

 単子葉植物の多くは,光合成の生成物として単糖類や二糖類をつくる糖葉を持っている。光合成によって生成される有機化合物は,一般にはデンプンとして検出しているが,糖葉を用いた実験ではブドウ糖や果糖として検出をしていく。学習指導要領では発展的な内容としておさえられている実験であるが,緑色植物の有機化合物生成を理解させるためには意義のある実験である。

2.インジゴカーミンを用いて酸素の放出を調ぺる実験。

インジゴカーミン法とは,水中の酸素の存在をインジゴカーミンの酸化還元指示薬としてのはたらきを利用して調べる方法である。

インジゴカーミンには次のような性質がある。

Indigo Carmine C 16  H 8  N 2  Na 2  O 8  S 2  

 青色粉末状の酸性染料で水にわずかに溶ける。酸化剤の検出用試薬,酸化還元指示薬,酸・塩基指示薬として用いられる。

(1) インジゴカ一ミン液のつくリかた

 インジゴカーミンの粉末を水に溶かすと青色の水溶液ができる。この水溶液は,インジゴカーミンが酸素と結ぴついたものであり,還元剤で酸素を取り去ると,やや黄色味がかった水溶液に変化してくる。この変化してできた水溶液は,極めて酸化されやすく,液の表面から酸素と結びついて,青色の酸化型の水溶液にもどろうとする。この変化を利用して酸素の検出が行なわれる。

インジゴカーミン液や還元剤の処方については,実験書などにいくつか述べられているが,予備実験の結果では,次に示す処方がよいようである。
○インジゴカーミン水溶液 インジゴカーミン         0.8g 水                1 リットル○還元剤水溶液 ハイドロサルファイトナトリウム  0.8g 炭酸水素ナトリウム        2.0g 水                1 リットル

 インジゴカーミン水溶液に還元剤水溶液を加えていくと,黄色味がかった還元型インジゴカーミンに変化していく。この時,還元剤水溶液を加えすぎると,酸化がすすんでも青変しにくくなり,実験に多くの時間がかかる結果になる。したがって,両液を混合する場合には,黄色に変化した水溶液の表面から,すぐに青変してくる程度に調飾をする必要がある。

 インジゴカーミン水溶液は,一度つくるとかなり長い時間保存することができるが,還元剤水溶液はこの処方でも約1時間程度しか還元力が持続しない。実験を行なう場合には,インジゴカーミン水溶液は事前に用意してあるものを用いてもよいが,還元剤水溶液はそのつどつくるようにしなけれぱならない。

(2)実験のすすめかた

ねらい

○緑色植物に光が当ると光合成が行なわれ,その結果酸素が発生することを確かめる。

準備

水生植物(クロモ,マツモなど),インジゴカーミン,ハイドロサルファイトナトリウム,炭酸水素ナトリウム,試験管,試験管立て,水そう,光源装置アルミはく,ゴムせん,ビーカー,窒素,酸素,二酸化炭素の入った小型ガスボンベ,


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