福島県教育センター所報ふくしま No.26(S51/1976.6) -006/034page

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手順と方法

1. インジゴカーミン水溶液と還元剤水溶液をつくる。インジゴカーミン水溶液に還元剤水溶液を加えて還元型インジゴカーミン水溶液にする。

2. 3本の試験管に還元型インジゴカーミン水溶液を入れ,窒索,酸素,二酸化炭素の入った小型ガスボンベから,それぞれの気体を水溶液の中に通して反応を調ぺる。

3. 図-1のようにA,B,Cの3本の試験管を用意し,B,Cの試験管に10〜15pの水生植物を入れ,Cの試験管をアルミはくで包む。

4. A,B,Cの試験管に還元型インジゴカーミン水溶液を入れ,図-2のようなゴムせん(流動バラフィンやオリーブ油を用いてもよい)をする。試験管を水そうに入れ,光源装置で光を照射する。この時Aの試験管は対照とする。

図-1
図-1

図-2
図-2

(3) 実験の結果と考察

 指示薬を用いた実験では,その特性をよく理解させてから実験を始めなけれぱならない。この実験でも,3種類の気体をインジゴカーミン水溶液に適して,反応を調べているが,この操作は省略できない重要なことである。

 還元型インジゴカーミン水溶液が,酸素に対して敏感に反応することがとらえられると,水溶液の表面の変化が酸素との反応であることが理解できる。この事実から,水溶液と空気との接触を断つ方法を考えさせたり,どのような実験が可能であるかを考えさせてみることも大切である。

 光源装置で光を照射し始めると,約10〜15分で水生植物のまわりから青色に変化してくる。30分ほどすると試験管の内部全体が青色になり,光合成による酸素の放出が確認できる。

 次に粂件の統一について考察を加えてみたい。

 この実験のように対照を設定した定性実験では,条件の統一が前提となっていなけれぱならない。条件の統一は厳密に考えていくと,使用する試験管の材質などまで考慮しなければならなくなるが,ここでは中学校の実験という立場で,実験材料の条件統一と光の条件を変えるために生じる温度条件の変化について考えてみたい。

 生物は外見上では同じに見える個体でも,成長のようすなどによって個体の持つ条件には多少の違いがある。水生植物のように1個体を切断して実験材料とする場合には,材料のどの部分を用いるかによっても条件が異なってくる。

 この実験のように,光を当てたものと当てないものとを比較する実験では,結果だけを見るならぱ,実験材料の多少の違いは無視できるように思われる。しかし,それは結果から判断したことであり,実験の計画の段階にもどって考えるならば,実験材料の条件を検討することが条件統一のスタートにならなけれぱならい。この実験では,水生植物の成長の程度,使用する部分,使用する大きさなどについて条件を統一する必要があろう。実験材料を吟味することは,生物実験の基本である。

 条件統一のもうひとつは温度条件の統一である。

 この実験では試験管を水そうに入れる方法で条件を統一している。もし,この操作を行なわずに光を照射すると,温度の条件が大きく変化してくる。

 図-3は,A,とCの試験管に水を入れ,200Wの光源装置から30cmの距離に置いた時の温度変化のグラフである。光が当るAの試験管と,アルミはくで光をさえぎったCの試験管の温度差は30分間で5℃になる。

図-3
図-3

 実験の開始時には統一されていた条件が,実験の進行とともに変化してくる。インジゴカーミンの実験を水そうに入れずに行なっても青色に変化してくる現象は同じであるが,条件の統一されていない実験であるから,この結果を用いて,光合成と光の関係を論ずることはできない。実際に温度を測定してみると,水そうに入れる操作が重要な意味を持つことがわかる。


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