福島県教育センター所報ふくしま No.26(S51/1976.6) -017/034page
をとらえさせる過程であり,bは,資料に含まれる条件の中で,対立価値を設定し,同質的なものから,異質化の過程において,生徒の思考を追いつめることによって,ねらいとする中心価値を追求させようとしたものである。
3. 検証授業の事前事後調査とその検定手続き
(ア)事前・事後調査とその内容分析の方法
例1の万法は,表(3)の資料との関連から,更に,各領域において,最も道徳性が低いと診断された問題をとらえ,取り組みやすい内容表現をくふうして,設間を作ったもので,授業の主題のねらいとする価値を探究する過程で,研究仮説の実証へどれだけ迫ったかをとらえるために,検証授業の事前,事後の調査に用いた。また,設間の回答内容は,評価カードにおける判断の基準(3領域5段階)を評定尺度とすることによって,評定した。
(イ) 事前・事後調査による授業効果の検定資料
例2-<道徳性換算数値の設定> (b3の検定資料) 論理性 創造性 視野 合計 換算基礎 換算値 評定 事前調査 2 2 2 6 6×100/15 40 事後調査 3 3 4 10 10×100/15 66.7 例1の評価カードから,a・b・c各領域の最高の評定数値は「5」であるから,総合的な見方をすれば,総合評定の最高は(評定「5」×領域「3」=総合評定「15」)である。従って,「100」点を基準にして換算すると,例2のようになり,これを検定の資料にした。
(2)検証と考察
1 授業の考察
(ア) B方式による授業記録「お年玉の思い出」から
例3-<観察メモおよび録音テープによる再生> 過程\内容 教師の基本発問 発問のねらい 生徒の主な反応 導入 筆者は,いつ,何をしましたか。 筋をたしかめさせる。
筆者の弱さや立派さに気付かせる。
お年玉の催促はしかたないが,盗みはよくない。 展開 「面白くない」をどう思いますか。 共感的に筆者の不満な気持ちをとらえさせる。 姉の不満はわかるが,大人を欺すのは,悪い。 筆者は,なぜ悲しくなったのですか。 過ちへのくやしさに気付かせる。 大人を欺して反省しているから。 おばさんに,なぜ相談しようとしたのですか。 筆者の積極的な向上心を理解させる。 筆者をよくわかってくれるから。 終末 この資料から学んだ事を書いてみよう。 (各自の感想から向上心を見る。) 一斉に,静かに書く。 筆者が,過去の苦い思い出の中で,自已を批判し,反省点を見つけ出して,更に,向上しようとしている価値教材からすれば,姉妹の関係や行い,感じ方,考え方などを,心情面からとらえるだけではなく,それらについて,更に,理想的なあり方を探るなど,もうすこし深まりのある授業であってもよかったが,生徒の実態からすれぱ,おばさんを信頼し,立ち直ろうとする姿を共感的に受けとめた授業であった。
この授業の感想をまとめてみると・・・・・・
表(6)-<但し,延人数> 感想の主な内容 初発 終末 とらえる観点 a 姉や妹の気持ちはわかる 7人 9人 他の立場の理解 b おばさんはわかる人 1 8 信頼 c 姉が反省したのはよかった 4 7 向上心 d 盗みはよくない 7 5 判断 e 妹のがめつさはしかたがない 6 0 思考の深まり f 無答・その他 6 5 一元的 判断の内容としては,bの信頼関係が基盤となって,cの反省が生まれていることに気付き,姉妹の態度に関しては,心情的にはわかるとしながらも,むしろ,思考の深まりから,反省向上しようとする授業の主題にかなり迫った授業であると思う。
(イ) A方式による授業記録「アイヌ語研究にふみきる」から