福島県教育センター所報ふくしま No.27(S51/1976.8) -025/026page
クエスチョン・アンド・アンサー(教育用語解説)
○教育経営
「教育経営」ということばは,わが国では昭和35年前後から使われ始めており,今では一般的に用いられるようになってきました。しかし今もって共通した概念規定はないようです。
当初は,教育行政と学校経営とを調和させる概念として教育経営という概念を使い出したのですが,これまでの学校経営を含めて,もう少し広い視点から教育をとらえ,その経営を構想するという立場がとられているため外延領域を広めてきており,教育経営の内包特にその最大の属性はなになのか,これが難かしい問題になっているようです。
そこで,伊藤和衛氏は「教育経営とは,国民の受教育権を保障する公教育の組織的な管理運営である」(教育経営の基礎理論)と定義しています。また牧昌見氏は「教育経営は,学校経営と教育行政と社会教育経営によって,教育の目的を効果的に達成するための諸条件を整備し,これを有機的に運営する営みであって,もっとも包括的な概念である。」とし,たんなる学校教育の経営だけを考えるのでなく,社会教育を含めて考えており,教育経営の主体は国および地方公共団体であるといっております。
○アクション・リサーチ
実際に直面している問題を発見し,事態を改善する実践を導き出すための科学的な調査・実験をいいます。この研究法を最初に提唱したのはK,レビンですが,特に人間関係や集団間の改善面で大きな効果をあげてきた研究法です。
この研究法の手続きは, 1. 計画(改善の対象となる問題をみつけ,改善の目標を設定し,改善のための方策を理論をもとに立案して仮説をたてる。) 2. 実施(仮説に従って実践する。) 3. 実践の評価(目標がどれだけ達成されたかを科学的方法で測定し,処置の効果について,仮説の正しさを判定する。修正を加える。)の順に行ない,さらに, A 再計画 B. 実施 C. 評価(修正) とこの手続きを繰り返し,らせん型のフィード・バックを行なっていく研究方法をとります。
その特質は,現場での実践活動をとおして調査研究活動を行なうという面と,観察され,記録され,分析された情報をもとに直ちにフィード・バックを行ない時々刻々,実践と研究のプロセスを変えてゆくところにあります。学習指導の改善等の教育実践にも活用されています。
○連合説と認知説
学習理論は,二つの大きな群にまとめられます。刺激-反応理論(連合説)と認知理論(認知説)です。しかし,必ずしもすべての理論がこの二つの群に属しているわけではありません。この二つの理論の裂目にはたくさんの学習理論が存在していますが,ここでは連合説と認知説のみを簡単に説明してみます。
観念連合の法則によって,人間の思考の働きを説明しようとする説を連合説といいます。連合説を大きく分けてみると,3つの説に整理分類されますが,そのなかでも,さきにあげた刺激-反応(S-R)説が最も有名です。すなわち,刺激と反応の連合によって学習を説明しようとする学説で,認知説に比べて,やや末梢的です。習慣の獲得を基礎として試行錯誤的な連合を重視する理論といえます。
逆に,学習を刺激の構造の認知とか,見通しにもとずく行動の変容と考えるものが認知説です。認知説は,連合説と比較して,中枢機構を重要視しますし,認知構造の獲得を学習の基礎と考えます。したがって,認知説では,問題解決の際の見通しが学習成立の決定因と考えられています。
あとがき
所報第27号ができました。お届けします。夏休みももうすぐ終りです。楽しみは迎えるまでが楽しみなもので,迎えたと思ったら,あっという間に過ぎてしまうものだとつくづく感じました。二学期はすべての充実を期すときですが,これも,あっ という間に終り,何をしたろうか と嘆かないようにしたいものです。