福島県教育センター所報ふくしま No.28(S51/1976.10) -009/026page
エ「資料の活用ができない」 ひとつの知能検査,ひとつの性格検査で,生徒を断定することは危険なことである。日常の行動を観察して,生徒の長所,短所を確かめ,他の教師の意見も聞いて総合的に進める配慮が必要である。教育相談係による計画的な運営がなされないと資料の活用も断片的となり,記録の保管,整理なども適正を欠くようになる。
(2)教育相談の運営と方法
<1> 教育相談の対象
教育相談は,すべての児童,生徒を対象としているが,その中でも特に考慮すべき対象児として,中学校教師があげているものをまとめてみると,
回答数
%
1 学業不振の生徒 23 27.7 2 問題傾向のある生徒 22 26.5 3 進路上悩みのある生徒 12 14.5 4 集団生活に不適応な生徒 8 9.7 5 交友関係に問題のある生徒 7 8.4 6 家庭に問題のある生徒 7 8.4 7 情緒不安定のある生徒 4 4.8 計
83 100.0 対象とする生徒は,学業不振と問題傾向のある生徒に集中していることが,はっきり分かるようである。高校受験の関門があるので,当然これに基づく問題行動に焦点があってしまうからであろう。また,小学校教師も,学業不振の児童を一番多くあげており,知育偏重の風潮の強さが,教師の子供に対する見方を変形させているのかも知れない。
<2> 教育相談室の有無
有 無 計 小学校 3 44 47 中学校 24 12 36 小学校47校中3校が教育相談室を有しており,中学校では,36校中24校約67%となっている。教育相談室は,その活動のかなめとなるので,中学校では,できるだけ設置することが望ましい。
<3> 教育相談室の利用度
教育相談室を有する中学校別校について,その利用度をまとめてみると,
学校数
%
1 十分利用されている 2 8.3 2 比較的利用されている 4 16.7 3 普通である 8 33.3 4 あまり良くない 7 29.2 5 全く利用されていない 3 12.5 計
24 100.0 1,2,3の計14校(約58%)の中学校がなんらかの形で利用している。全く利用していない3校においては,速やかに相談室を整備して,その機能が発揮できるように努めるべきである。
さらに,利用度を増すためには,施設設備や雰囲気などを検討してみることも必要なことである。
<4> 教育相談の時間のとり方
小学校
中学校
ア 始業前 0 0 イ 休み時間前 4 3 ウ 昼休み 3 4 エ 自習時間 0 1 オ 放課後 30 25 カ その他 10 3 計
47 36 表の示すとおり,小・中学校とも放課後における教育相談が最も多い。放課後といっても,学校行事,部活動などに時間をとられ,十分な相談ができないのが実態であろう。最近,教師と児童,生徒の個人的接触の少なさが問題にされている。これは,ラポートづくりの障害にもなっているので,特定の時間に拘泥せず,教師と児童,生徒が気軽に話のできる雰囲気づくりが望まれる。
<5> 組織の問題
小学校で教育相談係を組織の中に明示している学校はほとんどない。また,中学校で教育相談係の名称のない学枚は比較的多いが,生徒指導部あるいは生徒指導委員会の中で,教育相談の職務が分担されているようである。ここでは,養護教諭が生徒指導にどの程度かかわりを持っているかを中心として述べることにする。養護教諭が配置になっている小学校34校,中学校25校からの回答をまとめてみると,
有 無 計 小学校 6 28 34 中学校 6 19 25 養護教諭が,生徒指導にかかわりを持つ割合は,小学校では,約18%,中学校では,約24%である。全般的にみて,養護教諭が生徒指導に関係している割合は低率である。養護教諭が,身体の病気治療から心の治療にも関心を持っことができるようになれば,生徒指導上大きなカとなる。さらに,相談的な考え方を体得されるならば,児童,生徒の心の健康の万全を期することができるようになっていくだろう。
<6> 定期相談における相談内容の実態
浜通りの0中学校では,2年生男50名,女50名計100名の生徒に昭和51年7月5日から7月20日までの間定期相談を実施した。相談時間は土曜日を除き,45分授業で放課後の時間をあて,相談場所は,教室,相談室(1室),特別室であった。相談者は,担任あるいは担任外が生徒の希望により選ばれた。
相談内容は次の表に示すとおりである。なお,3クラスの中の2名の担任が中体連に関係していたので,担任外の相談が多くなったことを付記しておく。