福島県教育センター所報ふくしま No.28(S51/1976.10) -012/026page
(1) 特別活動を成立させた教育課程化の意義
「教育課程化」とは,教育課程外(課外)活動を教育課程の中に取り入れていくことの意味である。狭義には,「教科化」,広義には「目的がめいりょうに意識され,方法が具体的になってゆく過程」を意味している。したがって,特別活動成立までの教育課程化の経過は,広義な意味でとらえられるものである。
<1> 教育課程化の背景
・ 県外活動は,本来児童・生徒の基本的な欲求に根ざして生れたものであるから,これを禁止しようとしてもとうてい禁止しきれるものではないということに,しだいに,教育関係者が気づくようになってきたこと。
・ 課外活動の多くのものにはすぐれた教育的価値があること−中には教科などでは得られないような教育的価値をもつものがあること−が認められてきたこと。
・ 全人的な人間形成という教育理論の立場から,学校教育における知識・技能を授けることを中心とする各教科中心の伝統的な傾向を是正して,児童・生徒のあらゆる生活経験をできるだけ広く学校教育の中に取り入れて指導すべきだとする主張が有力となってきたこと。
<2> 教育課程化の条件
・ 目標,内容が明確となること。
・ 参加対象としての学年が明らかとなること。
・ 授業時数が明示されること。→法規上の条件
・ 教師にとって指導の義務が自覚されること。
・ 指導計画に基づく指導が行われること。
・ 経費が予算化されること。→指導上の条件
※ この条件こそが「授業としての特別活動」の基本的な性格を示すものといえる。
<3> 教育課程化における適切な指導
教育課程化されるとは,それまでなんの束縛もなく全く自由に行われていた児童・生徒たちの活動になんらかの形で指導の手が加えられるということになってくる。そこで,このような教育課程化における指導の性格を正当に−過大でも過少でもなく−理解することが必要である。
○ 意味と方法
教育課程化における「適切な指導」とは,課外活動を教育課程化してそれらのもつ得がたい教育的価値をいっそうよく達成させるための指導を意味する。そのための方法としては次のようなことをあげることができる。
・それらの活動がいっそう活発に行われるように,物心両面からの援助を与えたり,奨励したりすること。(援助・奨励)
・それらの活動がゆがんだ方向に脱線したり,興味にまかせて行き過ぎたりすることのないように,必要に応じて適時に適度の抑制を行うこと。(抑制)
・それらの活動をできるだけ多くの生徒に経験させるように意図的,計画的に配慮すること。(配慮)
○ 実践上の留意点
・教育課程化における適切な指導において,最も重要な点は,援助・奨励の機能と抑制や配慮の機能との間にほどよいバランスを保つようにすることである。
・教育課程化における実際の適切な指導のひとつとして,何も指導しないような指導も考える必要がある。それは,現象的には何も指導はされてはいないが,現象の背面では一種の「高度な配慮」として何も指導しないような指導も考える必要があるということである。教育課程化における指導−特別活動の指導−では,そのような「一種の高度な配慮」としての指導も考えていくことがたいせつである。
・教育課程化には,その性格上現実的な限界が認められる。つまり,課外活動の中には教育課程化に本来なじまないものがある。したがって,教育課程化によって特別活動が成立してもなお課外活動が残るものであること,そしてそのような課外活動も学校教育上重要であり,ときにはその一部が社会教育の対象として指導される形態も考えられていることなどについてもとらえておくことがたいせつである。
・教育課程化の機能は,単に課外活動から教育課程へという方向ではたらくばかりでなく,逆に教育課程から課外活動の活発化の方向でもはたらき,そこに一種の相互作用が認められる。現在,教育課程に取り入れられた諸活動(かつての課外活動)を特別活動として一括して指導しまうとしているが,その指導にあたって重要なことは,教育課程化の基本原理−相互作用−を正しく理解したうえで,教育課程全体はもとより,たえず教育課程外の諸活動にも目を注いで,その触発につとめることがたいせつである。
※ 児童・生徒の,興味・関心に真に根ざしているものであるか,そしてそれをどうとりあげてやるかなどとのかかわりあいのもとで「学校載量の時間」の在り方を考えてゆくうえで重要な視点の一つとなるであろう。