福島県教育センター所報ふくしま No.28(S51/1976.10) -014/026page

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<教育研究法講座研究報告>

文章題を解くための能力を伸ばす指導

梁川町立堰本小学枚 寺 島  泰

1.主題設定の趣旨

(1) 研究の動機

 「計算はできるが文章題が解けない。」ということは,よく聞くことであり,現にそう思っている児童も多い。そこで文章題が解けないという実態を明らかにして,文章題の数量相互の関係を構造的にとらえさせていく指導をすれば,文章題は容易に解けるようになるのではないかと考えられる。

(2) 研究のねらい

 文章題を3つの基本要素(例えば,単価,数量,代金)に分解し,その組み合わせとして問題を構造的に内容をは握させることは代数的な思考の助長に役立つという観点から,構造図による問題解決の指導をする。

(3) 問題点

 <1>  教研式診断学力検査による実態は握

  実態をは握するために教研式学年別知能検査と教研式診断的学力検査を実施して次のような結果を得た。

 表1 知能,学力の平均と標準偏差

     

学級

偏差値 知能 平均 44.3 43.1 45.8
標準偏差 8.0 7.1 8.8
学力 平均 48.1 47.1 49.7
標準偏差 7.8 7.4 8.0

 表2 診断的学力検査領域別正答率(%)

領域

全国

学級

到達率

数と計算 56 53 94.6
量と測定 44 38 84.4
図形 57 54 94.7
数量関係 40 30 75.0

 この学力調査からもわかるように,学級においては,数量関係の領域がいちじるしく劣っていることがわかった。そこで数量関係の内容を調べてみると,文章題に関する問題ができていない。またこのことは数量関係の領域のみならず,全領域において同じような結果を得た。

 <2>  文章題解決における児童の実態

  文章題解決における児童の実態は握の一つとして,問題傾向別正答率を調べ次のような結果を得た。

 表3 問題傾向別正答率

問題の傾向

正答率(%)

順思考1段階に関する問題 96
逆思考1段階に関する問題 68
要素間のは握に関する問題 40
逆思考2段階に関する問題 20

 順思考1段に関する問題は,簡単な整数を用いたものであれば,ほとんどの児童ができている。

 逆思考1段階に関する問題については文章が少し長くなると既知事項や求答事項のは握が容易でなくなる。また,整数が大きくなったり,小数や分数になると,計算のあやまりや読みちがいによる誤答が多くなってくる。

 要素間の関係をたいせつにする問題では,数のもっている意味を考えないで,ただ数をら列して立式して計算することによる誤答も多くなっている。

 簡単な問題でも逆思考2段になると正答率はさらにおちこんでくる。

 <3>  原 因

 文章題が十分に解決できない主な原因

 ア 文字,語句の読みや,その意味の理解が十分でない。

 イ 用語の概念が形成されていない。

 ウ 文意を図,表,グラフ,数直線,構造図,式などで表現できない。

 エ 解決の見通しが立てられない。

 オ 基礎的な計算に習熟していない。

 失敗する主な原因

 ア 計算ミスが多い。

 イ どのような問題にどのような計算を適用したらよいかわからない。

 ウ 数量相互の関係をとらえて,立式することができない。

 エ 単位に関することがらの理解が十分でない。


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