福島県教育センター所報ふくしま No.30(S52/1977.2) -007/025page

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 この段階の指導で注意したいことは,生徒に学習した語句を変えて書かせることを要求してはならないことである。この段階での重点は,あくまでも「再現」が正確にできるかどうかにおかれるべきである。

 -3-「書く」指導の第3段階 (Recombination)

 「再現」の段階を一歩すすめたものが,「再構成」(recombination)の段階である。既習のものにごくわずかの応用を加えて再現することが要求される。

 再構成のための学習活動は,いろいろの形式をとる。たとえば,語句を入れかえたり,文を変形したり,学習した語句の範囲内で情報をさらに加えて文を拡大したり名詞のかわりに代名詞を,語群のかわりに一つの語を用いて文を短縮したりする。生徒の既習の言語材料などを用いて,教師が英文の一部を再構成し,それを書き取らせる練習(recombination dictation)なども効果がある。

 再構成の作業は,聞く・話す,読むの領域でも行われるが,書く場合の再構成は他の領域に比して,抵抗が大きくより時間がかかるものである。これは,既習文を再構成して書く場合には,話す際に必要とする文法的な構造を操作する力と,読む際には理解の段階まででとどめておいたものを文字で書き表わさねばならぬという能力が同時に要求されるからである。

 -4-「書く」指導の第4段階 (Guided Writing)

 この「誘導作文」の段階においては,生徒は書く練習をすすめる場合,使用する語句や文型について,再構成の場合よりも自由が与えられる。しかし,あくまでも一定の指示やわけづが(guide)の中に限られており,自分の知っている範囲を越えたレベルで書こうとしてはならない。

 この段階における学習活動の形式には,再構成の場合と同じく完成練習(comfpletion),置換練習(replace−ment),代入練習(substitution)などがあり,練習がすすむにつれて表現のわく組が拡大される。すなわち,そのわく組は生徒の読んだ物語や論文形式のものからもとられるようになり,口語体や文語体のちがいについてもある程度学習することになる。また物語を対話文に,対話文を物語ふうに書かせることもある。物語や対話文の中の場所や人物を変えさせて書き変えることも考えられる。さらに一連の質問をだして,生徒に答えさせながら続きものの物語にしていくこともできる。身近なことについて基本的な英語で自己表現をさせたり,手紙や日記をモデルに従って書かせる活動もある。絵を使えば,書く作業が集中的に語いをふやす作業にもつながる。和文英訳は書く内容についてのわく組を日本語で与えた一種のguided writingと見なすことができよう。

 この段階は教師の創意工夫が最も生かされる段階でもあるが,あまり早くから生徒に自分勝手な英作文をさせないように注意すべきである。書く技術を制御(conltrol)するカが増すにつれて,しだいに次の第5段階の自由作文に移る準備ができていくことを知るべきである。

 -5-「甘く」指導の第5段階 (Composition)

 最後の自由作文(composition)の段階では,個人的な考えなどを発表するために,自分で語句や文構造を選んで書くことになる。しかし,一般に外国語学習においては,このレベルになっても,ほんとうに創作的にものを書くということはできない。誘導作文から自由作文への性急な移行はつつしまねばならない。

 この段階での英作文は,まず読んだり話し合ったりした内容と密接な関係のあることを書かせることから始めるとよい。すなわち,既習の教材内容を自分の考えに基づいて描写したり,物語にしたり,バラフレーズをして説明したり,要約したりすることから始めるのである。意識的に認められた制約の範囲内だけで自分の考えを表現することに慣れてくると,しだいに読んだ教材の中に述べられた考を乗り越えて,それを批評したり,展開したりしていくことができるようになる。

 この段階で留意すべきことは,表現すべき内容を整理・単純化(simplify)し,平易な表現形式を用いて明快に書くということである。母国語でも理解できない内容について書くということは,真の作文カを養うためにも厳につつしまねばならない。

 ここで,作文の評価について少しふれておきたい。理想的には,生徒が努力して書いてきたものは,すぐに教師が読み,訂正をし,評価を与えてフイード・バックをすべきである。訂正もしないでただ書かせることは,生徒に悪い習慣を強化することにもなる。しかもその習慣はあとになっても消しにくいものである。短いものをひんばんに書かせ,注意深く訂正し,話し合いをするのがよい。

 また,書き方の正確さ(つづり,文法,句読点など)は重要なものであるけれども,単なる書き方の正確さというものは,英語の真の知識とそれを使いうるカを犠牲にしてまで尊重されるべきものではない。評価の一部は書き方の正確さに与えられ,一部は構造上の多様性に割り当て,他の一部は語句の選択に与えられてしかるべきだと考える。また書かれた内容についても適切な評価が必要であろう。

 6.まとめ

 文は人なり。しかし,書くということは母国語であっても難しいものである.今後とも‘what to write’と‘how to write,について考えていきたい。


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