福島県教育センター所報ふくしま No.30(S52/1977.2) -010/026page
関係を知る指針である。学習指導過程における指導内容が,学習者の学習反応とどんなかかわりあいをもったかはっきり,とらえていかなければならない。
2)教材,指導法等の検討
・ 正答率の高い小問については,誤りをおかした個々の児童の反応を診断分析する。この場合は,個々に面接して,具体的に分析し,活用する。
・ 正答率の低い小問については,その小問のねらいを達成するために用いられた教材の内容・取り扱い方・前後の関連等に目をむけるとともに,指導方法と・その反応状況などに反省を加えていく。
・ 注意係数の大きい小問に検討を加える。
異質的な問題,正答率の低い問題の発問・あるいは困難度,目標との関連も検討するが・教材や指導の有効性もあわせて検討していくということをわすれないこと。
3)学習診断
-1- 個別指導の必要ある児童の発見
得点の高低だけでは習得の状況に対する指導の手だてがわらない。どんな内容を,どう指導するか,誤った小問の質的な内容まで考えていかなければならない。
目標達成の度合いが不十分であるものについては,個別指導の対象となることは当然である。
-2- 得点分布のバラツキの特性を知る。
S曲線の左右への拡がりをみる。拡がりが小さければバラツキも小さい。しかし,これは個人差をみるものではないので注意が必要である。
-3- 指導と児童の学習反応の密着性をみる。
差異係数の大きさから,密着性を判定し,その原因は児童側にあるのか,問題と指導の側にあるのか,あるいは両方にあるのかをみきわめなければならない。この場合は,一般に注意係教も参考にして判定する。
-4- 異質な反応パターンの児童の抽出
注意係数の大きい児童を抽出し・その原因を分析する特に,注意係数が常に大きい児童に対しては,授業案の中で,個別指導の機会を明確に位置づける必要がある。
-5- 児童へのフイードバック
S−P表を二枚複写しておき,一枚を個人別に切りとって配布し,自己反省させる資料にする。
これには,S−P表の構成,見方について,よく指導し,S−P表中にある児童番号を切取って,個々に面接しながら配布する。特に指導を必要としないものに対しては,簡単なコメントを与えるだけでよいが,反応傾向の異質なものに対しては,ていねいにとりあつかう。
-6- 学習推移表による診断(学習推移のプロフィール)
毎授業後のテスト結果,あるいは,単元ごとのS−P表から到達水準(段階)を明確にし,指導の流れに沿って,個人ごとの学習状況,理解の程度の変化に目をむけて学習推移表をつくり,個人診断の手がかりにする。
次の表は,A夫についての推移表で,7月4日長さに関するテスト,7月6日重さに関するテスト結果から,(2)-2-による段階に区分し,記入したものである。
到達段階が4,5,3と推移し不安定な状況がわかる。
これを,クラス全員について作成し,その変化をみて個人診断の手がかりにする。
推移の変化には一般に次のようなパターンがある。学習下降型,学習上昇型,学習安定型(常に上位の段階に位置している)学習不足型(常に下位の段階に位置している)学習不安定型である。
左のような注意係数一得点の平面を考え,大ざっぱに分析するのがよい。これについては特別にこのような表をつくらなくても,S−P表を上のような考えで,大ざっぱにみていく,S−P表の縦軸は得点なので,注意係数が0.5より大きいかどうかをみて判断すればよい。
つまり,平均値 標準偏差も算出し,S−P表にSP両曲線のかきこみをするとき,段階線もかき入れておけば注意係数をみるだけで容易に判断することができる。
-8- 部分的S−P表による診断
S−P表は問題に関連する指導と学習者とのかかわりぐあいを表わすものであるから,クラス内に対してのみ意味があるのであって,特別に同じ計画で指導するなど同一条件の場合を除いて,他との比較に利用することはさけるようにしなければならない。同一クラス内であれば,総合的に活用されたS−P表の全体から,必要な部分を,ぬきとって,部分的S−P表を作成し分析することもできる。たとえば,ある単元テストを実施しS−P表をつくり活用したとき,そのS−P表から基礎事項だけの小問を抽出して,部分的なS−P表をつくったり計算問題だけを集めてS−P表を作成したりすると,全体としては異質的であったが,計算の分野では正誤のパターンが同じ傾向にあるとか,基礎事項の分野で,理解不十分な点があり,不安定である等,質的にくわしく分析することもできる。
しかし,多忙な中での実践には,ここでも複写を利用し,必要小問をぬきとって再構成するか,又は,全体のS−P表をつくらず,はじめから,必要項目の小問のみで部分S−P表をつくってもよいと考える。
以上,S−P表の作成は比較的簡単であり,授業分析個人診断などの考察も手がけやすいという実践上の便利さを強調して,おわりたい。