福島県教育センター所報ふくしま No.31(S52/1977.6) -002/033page
教材事例研究 図画工作,美術,工芸における自作TPの利用について
第1研修部 大 谷 英 輔
はじめに
現在,各学校においては学習指導の効果を高めるために,教育機器を活用し指導法の改善・充実につとめています。これらの実践的研究の在り方を概観すると,ひとりひとりの学習を成立させること,動機づけに関すること,理解の深化・定着に関すること,学習診断や評価に関することなどいくつかの視点からアプローチされています。
教育機器は,一般に,「提示用機器」(テレビ,テープレコダー,オーバヘッド・プロジェクターなど)。「反応用機器」(プログラム・アナライザーなどの反応分析装置)。「刺激・反応用機器」(ティーチング・マシン,語学ラボトリーなど)に分けられますが,図画工作,美術,工芸では,提示用機器が利用され,活用されています。そこで指導の結果だけの作品提示や参考作品提示に止まりがちな現状を改善するために,オーバーヘッド・プロジェクター(OHP)活用のためのトランス・ペアレンシー(TC)の自作事例をいくつかあげ,実践の参考に供したいと思います。
(なお,0HP設備状況は表1の通りです。)(表1) OHP設備状況
東北地区(宮城県教育委員会調査) 48年5月現在
A:所有施設率 B:所有施設の平均台数
種 別 \ 県 別 青森 岩手 宮城 秋田 山形 福島 小学校 A 60 81 81 85 88 100 B 1.6 1.6 1.9 2.7 1.6 − 中学校 A 72 94 96 74 100 96 B 1.8 1.4 2.0 2.6 1.9 − 高等学校 A 72 99 98 73 96 97 B 1.4 3.0 2.4 1.7 1.7 − 1.複写法によるTP作り
複写法によるTP作りの方式は,拡散転写方式,ジァゾ方式,感熱方式,D・S方式,ファクシミリ方式などありますが,その中で感熱方式(クセノン方式,赤外線方式)のクセノン方式について述べてみたいと思う。
<利点> ・資料からそのままTPに転写することができる。
・専門的な技術を必要とせず,また,暗室などの設備も不用である。
・児童生徒の書いたスケッチ,ノートなど,すぐその場で即時的にTP化して教室でOHPで投影できる。
・教科書,雑誌,新聞などあらゆるところから資料を収集し,利用することができる。
・時間や労力が少なく(数秒で完了する),きれいで正確なTPを作ることができる。<問題点> ・ 鉛筆がき(カーボン)か,赤外線吸収発熱性物質(騰写インク)の印刷原稿に限る。色鉛筆で書いたものは,複写できない。
・ 経費が高くつく。(1)準備するもの
1.スケッチ,教科書,雑誌,新聞などの資料。
2.プラスチックシート
3.トラペンアップ(TU)(例)(2)作業
1.資料(原稿)の上に,複写シートを重ねて,ステージにふせる。
2.密着板をかぶせる。
3.圧カレバーを押して閃光で焼付ける。
注)資料が濃すぎてはりついてしまう場合は,あらかじめTPとの間に別のTP用クリヤーシート1枚をはさんでおくとよい。また,逆に紙質や印刷インキの状態で,薄でしか出ない場合は,フイルムをはがさずに,もう一度フラッシュさせることによって,かなり鮮明なTPを作ることができる。