福島県教育センター所報ふくしま No.31(S52/1977.6) -005/033page
中学校教材 洗たくの科学
実験観察のくふうと実験データの活用のしかた第2研修部 佐 藤 清 子
1. はじめに
技術・家庭科の目標は,実践的・体験的な学習を通して,「技術と生活とのかかわり合いを正しく理解し,生活の見方や考え方,更に行動のしかたを技術を通して身につける」ことである。
第2学年の被服では,休養着の製作,被服整理および手芸の製作を行なう実践的活動を通して,休養と被服との関係および被服材料の性能を理解させ,これらの正しい取り扱い方や製作能力を養うことを目標としている。
今回は被服整理のうちの「洗たく」にっいて,洗浄の基本要素を理解させるための洗浄作用の基礎実験や洗たく実習理論の裏づけとしての実験をとりあげた。
生徒は小学校では下着やブラウスの洗たく実習をしてきており,更に目常の経験や既得の知識・技能の累積から「なぜそうなるのか」とか「なぜそうすれぱよいのか」などの問題意識が生れると思われるので,既習事項を重視し,課題解決が図られるように実験観察させたり,科学的な資料を用いて指導するようにしたい。
2. 洗たくの科学
(1)洗浄作用の基礎実験
洗剤を溶かした洗剤溶液がよごれをおとすしくみは複雑であるが,洗浄作用の基本になる,浸透作用,乳化作用,分散作用の3つについて,水と洗剤溶液について比較しながらしらべる。
実験1 浸透作用
1)試料 試験布(厚地のウール地,今回使用のもの厚さ2.31mm,毛(100%)2p×2p 15ケ洗剤溶液(O.05%,0.1%,O.2%,0.4%)
2)用具 ビーカー 500tのもの5ケ,ピンセット,ストップウオッチ
3)方法
1. 洗剤溶液を調整する。この時泡立てないように注意する。泡が立った時はスプーンなどですくいとる。気泡があると布がもち上げられ浸透しにくい。
2. 試験布をピンセットでつまみ,洗剤溶液および水の面におとす。
3. 試験布を水面におとした時ストップウオッチを押し,試験布に液が浸透し,液面から落下し始めるまでの時間を測定する。(3回の平均を出す)
4)結果と考察
水の方は表面張力によって,10時間へても試験布の下の面がぬれるだけで,毛の繊維の中まで水が浸透していかない。
洗剤溶液ではO.05%で50秒8,0.2%で12秒6,0.4%で8秒5で液面から試験布が離れている。品質表示による標準使用量の近辺では速ややかに浸透し落下している。濃度を更に濃くしても大差はない。水と洗剤溶液の比較によって,洗剤中の界面活性剤が表面張力を低下させ浸透を容易にしていることを生徒に気づかせたい。洗浄作用の第1はよごれを繊緯から引き離すことである。
実験2 乳化作用
1)試料 食用油(スダンIIIで赤く着色しておく。油性の着色料であれば何でもよい。)O.2%の洗剤溶液,水
2)用具 共栓つきメスシリンダー,駒込ピペット
3)方法
1.洗剤溶液およぴ水をそれぞれ共栓メスシリンダーに40t入れる。(試験管を用いてもよい)
2.更にピペットで油10t加える。
3.栓をして,上下に5回振とうする。静置後,乳化の安定性を比較する。
4)結果と考察水の方は振とう後静置すると赤い脂肪球がどんどん上昇して写真1の左のようにくつきりと2層に分離する。洗剤溶液の方は,界面活性剤が両者を結びつけるため均一に乳化し水中油滴型の状態になっている。洗浄作用の第2段階で,油をよごれとみれば,よごれに吸着した洗剤分子は,微粒子状に乳化・分散して洗剤溶液中に遊離する。