福島県教育センター所報ふくしま No.31(S52/1977.6) -010/033page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

4〔行動目標の設定の調査及ぴ考察〕

表 10
表 10

表 11 行動目標を設定した教科

表 11 行動目標を設定した教科(小学校) 表 11 行動目標を設定した教科(中学校)

表 12
小学校 中学校
表12

 行動目標を実施しいる学校は表10のごとく小学校23%,中学校41%となる。

 表11は行動目標設定の教科別集計であるが小学校で算数が45%と高いのは,主要教科であること,系統性の高い教科であることなどによるであろう。中学校では教科による差は余りみられない。全教科を行動目標化している学校が6%もある。

  中学校は教科担任制であるので小学校に比して各教科の行動目標化がやりやすいということ,また中学校教師の教科に対する専門性ということなどの理由が考えられる。

 表12は行動目標に対する意識,関心の調査であるが,積極的に関心を示している学校は小・中学校とも85%強を示している,この数字と上掲表10の数宇とを比べてみると,そこに大きな開きがある。小学校を例にとると,行動目標を設定したい,検当するが95%であるに対し,実際に実施している学校は23%に過ぎない。中学校でも同じことがいえるのである。

5〔全体を通しての考察〕

 以上の調査を通し,寄せられた回答からみて用語の規定・調査内容,方法などに不備の点が多かったことを反省する。そのためもあってか,一連の評価活動,行動目標化など実際に行っている学校はこの調査の結果からみる限り必らずしも高い数字を示していない。

  このことは,この調査を始める時点である程度予想されていたことではあるが,行動目標化実施の阻害条件などを考えると,多くの問題がひそんでいるように思われる。たとえば補教の問題にしても,現在の過密な学校生活の中で補教の時間をどのように生み出すのか,これらは,教育課程,学校経営の範ちゅうにも関連してくることであって一教師個人の努力のみでは解決のつかない問題である。

 当教育センターに,種々の研修に来所された先生方と,教科の行動目標について話し合ってみた結果,次のような答えが返ってきた。
・ 行動目標という意味内容がよくわからたい。
・ 行動目標の良いことはわかるが,毎目の指導で精いっぱいなのが実状で,行動目標化まではとても手がまわらない。
・ 教科の目標を,ことさら行動目標化というように改めて書き表わさなくても,実際の授業の中で目標を明確に押えておけばそれでもよいのではないか。
・ 行動目標化は,算数・数学などの教科では比較的やりやすいが,鑑賞教材のような場合,つまり情意的な面が強い教科でも成立するのか,つまりすべての教科においても行動目標化できるか。

3 おわりに

 行動目標化(Behaviora1 objective)とは,ある学習課題によって達成される目標あるいは成果を,観察可能な行動または振る舞いを表わす用語で示したものであり,その前提となる考えは学習とは「あらわな行動」の変容であり,「あらわな行動」以外に学習が行われたか否かを判断する方法はないという考え方である。従って学習課題の目標を,行動目標化すると同時に評価の視点や方法は定まり,行動目標が,単元あるいは教材の評価目標となるのである。

 もちろん行動目標に対する批判も幾っかある。それらの批判をまとめると,
1. それは結果主義であり,冷たく,ヒューマンさに欠ける。
2. 外に表れた効果,明白な行動をみるというが,それだけでは深い思考,感動は見られないのではないか,

 以上の批判に対して興水実氏は「行動目標化は測定できる範囲内で行うのであって,目標を明確化するとという方向で考えたらよい」(国語教育)と述べておる。例えば,グループの各人が指導の目標を具体的に書きだし,集約するというような方法でも行動目標化ができる。ともあれ,行動目標は授業改善の一つの足がかりとなるであろう。

参考文献
 教育における評価の理論,梶田叡一,金子書房
 国語科教育における行動目標,興水実(国語教育)
 学習評価ノ・ンドブック上・下 第一法規
 形成的評価による完全習得学習,梶田叡一他明治図書


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。