福島県教育センター所報ふくしま No.31(S52/1977.6) -011/033page

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<特別活動シリーズ No1>

望ましい集団活動の指導(その1)

第1研修部 大 草 栄 治

I. 特別活動の本質化をめざす課題

 特別活動の小・中学校の総括目標の特徴は,「集団活動」を明確に位置づけ,それを特別活動の基本的な性格としているところにある。「望ましい集団活動を通して」ということを方法として,「人格(心身)の調和的発達を図る」という目標を達成しようということである。

 そこで,これまでの実践をふりかえってみると,特別活動は「集団活動」を基本的な性格としているが,「集団活動」とはどのようなものであるか,「望ましい集団活動」とはどのようにして育成されるものなのか,「望ましい集団活動」はどのように人間形成に貢献するものなのかなどについて,いささかあいまいなままに実践されてきたきらいがある。

 昭和52年度「特別活動指導の重点」(県教委)においても,「望ましい集団活動をより充実したものとするため,指導計画を検討し,改善を図る。」ということを第1にかかげている。

 このような実情をふまえ,このシリーズにおいても,まず3回にわたり「望ましい集団活動の指導」について述べることにしたい。

2. 学校における集団の理解

(1) 集団の基本的性格

 特別活動の領域においては。児童生徒が同時に種々の集団(学級集団,学年集団,クラブ集団,学校集団など)に参加している。いずれの集団内においても親和的な人間関係のもとで,心理的な相互関係(相互的結合関係,相互的依存関係)の発達を促すことのできるようた援助(励ます)・指導(育てる)が必要である。

1. 集団とは単なる人の集合(集合態)ではなく,心理集団の特性の一部しか有していない群集や大衆などとは区別される。したがって特別活動においては,学校において成立する諸集団の成員問の「相互作用」(杜会的相互作用)を活発にして,心理集団としての成熟を望ましいものとしなければならない。

注)ここでとりあげる集団は,心理学的な立場でのとらえ方を中心とするもので,文化,国民,政治というような杜会学的な立場でとらえようとしているものではない。

注)集合(集合態)とは生物体の何らかの集まりを意味し,人間の在り方の一般状態をさすものである。その性質としては,空間的接近,同時的存在,類似的集まりということのみで相互作用はみられず,群集,大衆,公衆などとよばれ集団とは区別されている。

ア. 集団とは2人またはそれ以上の人々の集まりで,成員間に相互作用がみられる。

 1 親和的な感情(相互的結合関係)をもっている。
  ・ 「われわれ感情」をもっている。
  ・ 集団への一体感をもっている。

 2 心理的に相互に依存(相互的依存関係)しあっている。
  ・ 共通な目標をもっている。
  ・ 同一集団の成員であると認め合い,反応し合っている。
  ・ 成員自らの力で集団のきまり(集団基準=集団規範)がつくられ,維持されている。

イ. 集団の成員が有限で,その集団に特有な構造をもっている。

 1 単なる集合(集合態)では,集まる個人の数が常に不定であるが,集団では成員を数えることができるし,常にその数は有限である。

 2 集団内のそれぞれの成員は,それぞれ相互関係をもち,それに基づいて「地位」と「役割」が「組織」として構造づけられている。

ウ. 集団は,常に変容の可能性をもっている。

 1 時間の推移による変容の可能性がある。

 集団の規模,成員間の相互関係,全体としての関係構造が時間の推移とともに常に変わりやすく,集合から集団へ,集団から集合へと結合と離散がくり返えされる可能性をもっている。

 2 離散の原因としては次のようなことがある。

 弧立者や疎外者が発生して不満が爆発したり,下位集団が発生したりすることから起ってくる。

(2) 相互作用(人間関係における相互作用なので杜


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