福島県教育センター所報ふくしま No.31(S52/1977.6) -012/033page

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会的相互作用ともいう)とは,一般に集団の成員Aが集団成員Bに,BはまたAに,主として言語およぴ非言語により態度や行動に一定の変化を及ぼし合うような場合に,そのような変化をもたらした作用や過程を相互作用(杜会的相互作用)という。

 学校において成立する諸集団は,常にその集団全体からみて相互作用が活発におこなわれているとはいえない。人間性は人間関係のもとで育てられるという「杜会化」の原理をふまえて,相互作用による「杜会的学習」の重要性に着目しなくては,特別活動のねらいとする「人格(心身)の調和的発達を図る」ことはできない。したがって,それぞれの集団成員間の相互作用を活発にするための援助(励ます)・指導(育てる)こそは,特別活動の指導の原点ともなるべきことたのである。

ア 集団成員の相互作用の原理

・ 成員間の相互作用は,その集団の凝集カ(集団成員が集団に対して感ずる魅力の全体)が高いほどひんぱんに行われる。

・ 相互作用の増大は,一般に集団の凝集力を高める傾向がある。

・ 成員間に意見の不一致(ただし,あまり極端でないもの)があるとき,その不一致をつくり出した問題が集団の目標と密接に関連しているほど・そのことについての成員の相互作用が多くなる。

・ 成員間の相互作用がひんぱんであればあるほど,ますます集団の意見を正しく判断できるようになる。すなわち,集団の行動が予測できるようになり,その判断は適切な行動の指漂として信頼できるようになる。このことは,集団としてのきまり(集団基準=集団規模)を形成する基盤となる。

・ ある期間存続している集団では,相互作用は成員間に任意に分布するのではなく,一定の構造化された型をもっている。ソシオメトリックの構造やコミュニケーションの流通網などがそれにあたる。

・ 成員間の相互作用は,相互理解(個性的理解)と相互尊重(個性尊重)に基づく,望ましい人関係のもとでのみ教育的効果を発揮することができる。

注)成員間の相互作用が互いに他を妨害し,自己の立場のみを主張する形態は「競争」とよばれる。逆に,互いに他人の立場を認め,助け合い,他人の満足が自己の満足となるような相互作用は「協同」とよばれる。「集団間競争」は「集団内協同」を促すものであるといわれている。

イ. 望ましい人間関係をもつ集団の特色

・ 集団の目標が集団成員の全員によつて設定され,その目標を達成することが成員ひとりひとりの願望や幸福と深くかかわっていることを集団成員が理解している。

・ 集団内におけるコミュニケーションが活発に行われ,相互理解が深まるとともに,集団活動が相互の協力・信頼のもとに展開されている。

・ 集団成員は,集団生活においてそれぞれの役割を果し,それぞれが集団生活に貢献していると確信している。

・ 集団成員どうしが各自の個性を尊重し合うとともに,人間的接触を通して互いに学ぴ合う(社会的学習)ことが活発に行われている。

(2) 学校における諸集団の特質

1 学級集団

 学級は知識・技能を教授することるを目的につくられた集団であるが,それとともに親和的な人間関係でのもとでの相互作用(相互的結合関係,相互的依存関係)の発達がはかられる場である。

注) 学級集団の中には,学級の目標を達成するとともにその特徴を生かすための「係(地位と役割)集団」と,自発的に結合し私的なきまり(基準=規範)に基く独自の構造をもつ「仲間集団」がある。

2 クラブ集団

 学年と教科の立場をはなれ,同じ趣味と興味を持つ児童生徒の集まりである。

 しかし,成員の興味にしても構成にしてもその違いが大きいので,活動内容が画一的で活動の手順が一律であってはいけない。文化的な仲間集団であるから,部分的には画一的で機械的な活動を含むとしても創造的な活動を重視する必要がある。

3 学校集団

ア.小規模校

 学校と地域杜会との結びつきが強く,地域の人間関係が学校集団へすぐ反映し,年齢,学年,性の違いのあるものが一つの集団を形成している。

イ.大規模校

 全校集団の統合,豊かな集団活動,集団の成員としての自覚,個人差や個性への配慮などの成果をもたらすのがむずかしい。また,各学級集団が閉鎖的になる傾向があるので,全校集団には専制がなく各学級集団には独善がないようにする必要がある。

次回「望ましい特別活動の指導」(その2)では, 3.集団活動の育成として,(1)集団活動の性格,(2)望 ましい集団活動育成の条件について述べる予定です。

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