福島県教育センター所報ふくしま No.31(S52/1977.6) -013/033page
式表示の能力を高める指導
会津若松市立一箕小学校 讃 岐 勘 次
1. 研究の趣旨
(1)研究の動機とねらい
学年や研究部などで「計算問題はよくできるが,文章題になるとついてこれない児童がたくさんいる」ということがよく問題になる。特に学年がすすむにつれてこの傾向がつよくなってくるようである。
また,文章題は他の領域からみると,はっきりした指導体系がなく,教師側としても指導しにくい面が多くみられる。
そこで,文章題指導の要点を明らかにし,その指導体系を考えるためにこの研究にとりくむことにした。
(2)問題点
<表1> 51.6
計算問題 番号 正答率
a + x = b ( a + [ ] = b ) (1) 100 (2) 100 (3) 97 (4) 84 (5) 84
x + a = b ( [ ] + a = b ) (6) 72 (7) 84 (8) 81 (9) 100 (10) 78
x - a = b ( [ ] - a = b ) (11) 97 (12) 84 (13) 94 (14) 88 (15) 81
a - x = b ( a - [ ] = b ) (16) 88 (17) 88 (18) 91 (19) 100 (20) 91 平 均 89 <表1〉は前学年の計算問題(2位数十2位数,2位数一2位数)について調査した結果である。誤答のほとんどは,くり上がり,くり下がりのまちがいで,計算はだいたいの児童ができているようである。
<表2> は,前学年の文章題について調査した結果である。これをみると,文章題は計算問題にくらべて正答率がたいへんひくいことがわかる。
誤答のほとんどは,数量関係がつかめない者,立式の途中でつまずいている者などである。これは,問題文の意味が読みとれなかったり,数量関係を正しくつかんでいないことに問題があるものと思われる。
また,同じ表から問題によっては,ことばの式を手がかりにすれば,そうとうの児童が解決できるということもわかった。(特にふだんの授業であまりふるわない児童に多くあらわれている。)
一例をあげると
ドッジボールをしています。そこへ男の子が3人
女の子が5人きたので,みんなで24人になりまし
た。はじめに何人いましたか。一A 問題文のみ
ドッジボールをしています。そこへ男の子が3人
女の子が5人きたので,みんなで24人になりまし
た。はじめに何人いましたか。
はじめにいた数 +
あとからきた数 =
ぜんたいの数
一B間題文とことばの式
<表 2> 51.6
問題内容 番号 A 問題文のみ B 問題文とことばの式 (正答率) (正答率) x + a = b (1) 59 78 (2) 67 63 a + b = x (3) 33 77 (4) 50 67 (5) 57 87 a - b = x (6) 50 53 (7) 68 100 (8) 48 58 (9) 84 97 (10) 77 90 (11) 67 100 a - x = b (12) 53 88 (13) 80 90 x - a = b (14) 65 55 (15) 83 73 a x b = x (16) 87 93 (17) 67 97 平 均 64 80 (3)原 因
1)文章題ということばではなくても,問題解決は1年生から算数の時間にとりあげられ指導されてきた。しかし,問題解決においては,途中の思考過程よりも結果が重んじられ,答えを出すことに重点がおかれてきたと思われる。
2)児童の実態は
ア 問題文を読むということは,国語的な読みが多く,数量関係をとらえての読みがあさい。
イ 数量間の関係はあくができず,単に数値を組み合わせて式を立てたつもりでいる。
ウ 自分の求めた答えが,どのような思考過程をへて,でてきたものであるかを筋道をたてて説明する力が不足している。
であり,このことに文章題ができない原因がある。