福島県教育センター所報ふくしま No.31(S52/1977.6) -014/033page
2.仮説
(1) 仮説のための理論
・ 文章題解決の要点は,文章中の数量関係が正しくはあくできるということである。数量関係がわかれば,ことばの式を用いて表現する過程をへて式に表わすことができる。
ことばの式の背景には集合があり,ことばの式は抽象的な文字の式と同じはたらきをするが,表現としては具体的な意味をもっているので,数量間の関係がわかりやすく,求める式にいたる過程として重要な位置を占めている。・ カードを用い視覚にうったえることは,児童の理解を助ける。ことばの式でのことばは,数量の集合を代表しているから1個の数値だけでなく,約束された集合に属するどの数値でもはいりうる可能性をもつものである。
このことばをカードに記入し,それを統合したり交換したりしてことばの式を理解させ,活用できるようにすることは有効な方法と思われる。問題解決にあたっては
1)問題の数量関係をことばとしてとりだす
2)カードに記入する
3)操作しながら立式する
以上の3段階をとるわけである。・ このようにしてことばの式をじゅうぶん指導することは,児童の思考を助け,式表示の能力は高まるであろうと考え,次のような仮説を設定した
(2) 仮 説
ことばの式の指導において,カードをもちいれば式表示の能力は高まるであろう。
3. 計 画
(1) 方法 一群法による
(2) 対象 3年1組 32名(男16名女16名)
(3) 組織 個人研究
(4) 日程
1) 研究計画の樹立(5月〜7月)
ア 調査 ………………………………5月〜6月
イ 文献研究 …………………………6月〜7月
ウ 研究計画,仮説の決定……………7月
2) 検証 (8月〜11月)
ア 教材研究,指導計画検討…………8月〜9月
イ 事前テスト ………………………9月
ウ 検証授業,事後テスト ……… 10月〜11月
3) 整理 (11月〜2月)
ア 結果の分析 ……………………12月
イ 研究のまとめ ……………………1月〜2月
4. 概要と考察
(1) 経過のあらまし
1) 文章題の指導
文章題を解くことは,その文章題に示されている数量間の関係を発見することである。小学校で取り扱う文章題は,これを式に表わせば,方程式になるものが多く,立式後は加減乗除を用いて解を見い出せぱよい。
文章題の指導は,文章から数量を発見し,カードに記入し,カードを操作することによってことばの式を見い出し,やがてもとめる式にいたる手順をとる。立式後は,四則演算を用いて計算すればよいわけである。
2) 式表示
2年生では,式が数量についての事がらや関係を表わす簡潔な表現であることを理解させ,等号や不等号を用いて相等関係,大小関係を表わすことを扱っている。3年生では,指導内容として数量の関係を公式の形に表わすこと,とある。具体的な事象の中にある関係について,数値の代わりにことばを用いて公式の形に表わすことにより,背後にある一般的な関係をとらえさせることを考えている。
カードとことばの式の例
例1 1mのねだんが10円のひもを何mか買ってだい金を40円はらいました。買った長さは何mでしょうか。
1.の段階 ことばとしてとりだす
(ねだん) (買った金) (だい金)
2.の段階 カードに記入する
[ねだん] [買った数] [だい金]
3.の段階 カードを操作し、ことばの式をつくる。
[ねだん] × [買った数] = [だい金] 10 × [4] = 40 例2 リボンを4m買って,だい金を260円はらいました。リボン1mのねだんはいくらですか。
1.、2. 略
3.の段階
[ねだん] × [買った数] = [だい金] [65] × 4 = 260 例3 1つつみ6こ入りの石けんのはこが8はこあります。石けんの数は,ぜんぶでいくつですか。
1.、2. 略