福島県教育センター所報ふくしま No.32(S52/1977.8) -007/033page

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言語要素の学習とコミュニケーション

Learning of morphological & syntactical elements and Communication

第1研修部 吉 成 尚 武

1. 中学校学習指導要領と言語活動

 昭和52年度北海道・東北地区中学校教育課程講習会 ( 52.6.7〜8 ) における中学校学習指導要領の改訂の方針によると,英語の指導にあたっては,言語活動の基礎を養うことを重視し,言語活動の指導事項の主なものを示して,より適切な指導ができるようにしたことを強調している。

 現行の言語活動20項目は,前回の改訂 ( 44.4.14 ) で「学習活動」の中から「言語活動」の要素の強いものだけとりあげ,練習のための活動は省いてまとめたものといわれている。今回の改訂では,より具体的に示され,英語を理解し,英語で表現する能力を養うため次のような10項目の言語活動にまとめられている。

ア 聞くこと,話すこと
 (ア)話題の中心をとらえ,必要な内容を聞き取ること。
 (イ)話そうとする事柄を整理し,大事なことを落とさないように話すこと。
 (ウ)相手の意向を聞き取って的確に話すこと。

イ 読むこと
 (ア)はっきりした発音で正しく音読すること。
 (イ)文の内容を考えながら音読したり黙読したりすること。
 (ウ)文の内容を理解して内容が表現されるように音読すること。
 (工)書かれていることの内容を全体としてまとめて読み取ること。

ウ 書くこと
 (ア)文を聞いて正しく書き取ること。
 (イ)書こうとする事柄を整理して大事なことを落とさないように書くこと。
 (ウ)書かれている内容を読み取って,それについて書くこと。

言語活動をすすめるにあたって,具体的な指導の方向が示されたわけであるが,現行中学校学習指導要領の実施にあたっても,「言語の実際的運用」ということを十分認識して指導したいものである。

 生徒が英語学習で興味や関心をもつことができるのは・チョムスキー ( N.Chomsky ) のいう規則を用いて確かめ理解を深める「知識形成」 ( competence ) でなくて,それを基盤とした新しい運用能力を高める「言語の実際的使用」 ( performance ) である。

 また「言語活動」をスキーにたとえると,いかにスキーの技術に関する本を読んでも,ウェデルンはできないのと同様に,外国語学習でも自分からすすんで表現する機会が与えられなければ,また機会を得なければ上達しないといえるわけである。

2. 言語要素の学習とコミュニケーション

 1単位時間の中で,「言語活動」をする時間がないとか,生徒の能力,地域性から無理であるということがいわれている。このことは,従来の指導プロセス ( teaching procedure ) の修正なしに「言語活動」をとり入れようとするところに無理があると思われる。

 また発音練習や文型練習などの「学習活動」から一足飛びに「言語活動」へ入ろうとするために,教師も生徒も挫折感に見舞われるのではないだろうか。そこで次のような三つのステップを考えて指導すれば,教師も,生徒も成就感を味わうことができるのではないかと思う。

Actvity l (言語要素の学習段階)

 教師の読む ( 言す ) 英語を即座に「くりかえし」 ( repetition ) ができるということは,コミュニケーションの要素の第一歩が学習できたということである。すなわち,モデルを聞いてくりかえそうとする間(ま)の意味,内容,音声の識別の時間 ( significant period ) はコミュニケーションのはじまりであるからである。


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