福島県教育センター所報ふくしま No.32(S52/1977.8) -008/033page
−例−
(1) 外国語音,音素の差異の識別。( discrimination )
(2) 対話文(dialogue)の機械的な暗唱。
(3) 教師が,「ことばによる手がかり」 (verbal cue)を与えて置換練習 ( substitution dril1 ) をする。
(4) 教師の範読について「斉読」 ( reading a1oud )
(5) テキストの reading にもとずいた質問。テキストに出てくる人物,事物,行動についての問答で日本語 ( または英語 ) で質問して目本語で答えるような設問。( Question-answering )この段階は,「意志を正確に伝えるために,欠かすことのできない基本的な文型の修得に関する訓練段階」であり, 0ra1 approach による練習によって積み上げられた言語習慣を確立することが目標である。このことは,将来,上級の段階になって自分が言いたいことだけを考えれば,人にわかるように英語でどういえばよいかということ ( Everyone have か has かなど ) に気を使わなくてすむようにするためである。
もちろん,この基本的,基礎的な言語習慣を身につけさせるためには,文型ドリルのような場で過剰学習 ( overlearning ) になるまで練習を積み重ねていかなければならない。形態上,統語上の要素 ( morphological and syntactical elements (1) ) の過剰学習が非難され,軽視されてきた理由は,教師の想像力に欠けた反復一辺倒のドリルによって,生徒に疲れと嫌悪の情をおこさせたことに起因しているといわれている。提示のしかたに変化をつけ,意味と無関係な機械的なドリル(たとえば機械的な文型練習 ( Pattern practice ) にならないような配慮が必要である。
また,生徒に自分が練習していることを意識させないで過剰学習 ( overlearning ) を強化しすぎると反応が固定してしまう ( たとえば,どんな質問にも,Yes,it is. Yes,I do. と答える生徒 ) ことにも注意しなければならない。
コミュニケーション ( communication skill ) というものは,とても到達できない世界だと考えて上記の Activity 1 の段階にとどまっていないだろうか。もちろん完全な言語活動は,教室内では困難であリ,それは生涯をとおしての学習 ( terminal behavior in1anguage 1earning ) であるが,日常の英語指導では,いかにして「学習活動」 ( completely manipulative activity (2) ) を効率的に,簡潔に指導して次の段階にすすむかを考えなければならない。
Activity 2 ( 言語活動の入門期の段階 )
教師のモデルについてのくりかえしの練習 ( mim-mem ) の後に,同じ文を再現 ( reproduce ) させることでさえ, Activity 1 に比して一歩前進した言語活動であるといえよう。というのは誤りをおかさぬように注意して自已の言語蓄積 ( language resources ) からひき出す過程を考えれば明白である。
− 例 −
(1) My father is a teacher. の文型を与えてから,自分の父(母)の職業を言わせる。
(2) 対話文 ( dialogue ) をペアで暗唱させる。
(3) ことば以外の手段による「手がかり」 ( non-verbal cue ) を与えて置換練習をさせる。たとえば,数枚の絵の中から1枚の絵をえらばせて置換 ( substitute ) させる。
(4) 指名読み ( individua1 reading ) や「語りかけ」 ( Prompted speech (3) )
(5) テキストの内容についての英問.英答 ( Question-answering ) で,話 ( story ) の順序に従って行う。質間に対する答がテキストの中にあり,生徒は単語や文を探して答えることができる問答を行う。たとえ一部分にしても,話す人の意志の入らない言葉は, manipulation ( 操作 ) であってコミュニケーションにはなり得ないわけである。従って,たとえば,対話文 ( dialogue ) の一部分でもよいから生徒に書かせたり書きかえさせたりする機会を与えたいものである。
この段階は,まだコミュニケーション段階の言語活動とはいえないので,「入門期の段階」 ( mechanical drills から meaningfu1 drills への段階 ) ということができるであろう。
Activity 3 (コミュニケーションの段階)
(1)Wilga M.Rivers,Teaching Foreign-Language Skills(The University of Chicago Press,Chicago and London,1971),p.166.
(2)Kenneth Croft,Readings on English as a Second Language(Massachusetts,Winthrop.1972),p.405.
(3)Michael Westの用語で"read and look up"ともいう。(1)breath group毎にテキストから目を離して読む段階,(2)教師が一文を読むたびに適当な発問をし,生徒はテキストから目を離して答える段階。(3)lip-reading (4)賂
Yoshio 0gawa,Sanseido's Dictionary of Eng1ish Language Teaching(Sanseido,1964),p.459.