福島県教育センター所報ふくしま No.32(S52/1977.8) -009/033page

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 この段階は,「コミュニケーションから,相手の意図や聞いている人の目的に合ったもので,使いたいと思う情報伝達の表現形式 ( the forms of message ) を頭脳の中から引き出す訓練段階」である。

 生徒が,英語の構造をすべて確実に身につくまで待ってから,コミュニケーションの練習をさせるというのでは遅すぎると思われる。言語要素に関する機械的な練習のあとで,級友たちとのコミュニケーションの中で,自然に英語を使えたという自信を与える機会を設定して,生徒の思っていることを言い表わす技能を伸ばしてやらなければならない。

− 例 −

(1) 物語や話題の中心をとらえ,必要な内容を聞きとる。( summarising a passage )
 録音テープを聞いて,物語などの内容について日本語または英語で,大意を制限語数(たとえば100語以内)でまとめる。

(2) 対話文 ( dialogue ) の一部をペアで創作して対話を行う。

(3) テキストの内容について英問英答を行う。内容理解の上に立って生徒自身の経験などに関連した発問を工夫する。

 中学校学習指導要領の言語活動からも,次のようなコミュニケーションの練習が考えられる。

ア 聞くこと,話すこと
 (イ)話そうとする事柄を整理し,大事なことを
   落さないように話すこと。
 (ウ)相手の意向を聞き取って的確に話すこと。

(4) インタビュア ( interviewer )
 生徒二人ずつ組になって,交互にインタビュア(会見記者)になって英語で行う。もちろんお互いに初対面という前提で3〜5分のインタビューを行い,その結果を学級の全員に紹介する方法。

(5) リポーター ( group reporter )
 数グループにわかれて,学校生活や興味のあるトピックス(相撲や東京音楽祭など)を中心に英語で話し合い,代表がどんなことを話し合ったか学級の全員に報告する方法。

イ 読むこと
 (ウ)文の内容を理解して,内容が表現さ
   れるように音読すること。

(6) 感情などの言語による強調表現の練習
 言葉で意志を伝達する場合,無意識に,だれもが行つているのは,音声の強弱,高低,間合いなどを効果的に使用しているという事実である。「文の内容が表現されるように音読する」ために non-verbal communication ( 非言語音声によるコミュニケーション ) の技能を身につけ,自分の意志を完全に伝達する練習も大切なことである。

 たとえば,“ Rain ! " ( 雨 )(4)という一語をどんなふうに区別して表現できるか,生徒に練習させるのも興味深いことである。

“ Rain ! " ( 皐魅(かんばつ) 後に降る恵みの雨 )
“ Rain ! " ( 遠足が中止になるうらみの雨 )
“ Rain ! " ( 五日間も降り続くいやな雨 )

(7) 自己の解釈にもとずく朗読 ( Oral interpretation )
 NHKのラジオ番組「私の本棚」の朗読が,聴取者に文学作晶の情量などを紡梯(ほうふつ) させるように作品内容を十分に理解した上で朗読する方法。中学上級以上の生徒を対象として,グループごとにそれぞれ役割を分担させて教室で発表させることは容易にとり入れることができるであろう。

3. おわりに

 コミュニケーション段階の「言語活動」は,「言語材料の学習」のきびしいしっけと異なり,生徒に自由な雰囲気の中でのびのびと自己の意志を伝達させる活動である。たとえば,「文型練習」では,正しい言葉の習慣を身につけさせるためにきびしさが要求される。しかし「言語活動」の段階では,自分の考えを表現するために語 ( vocabulary ) や文型 ( sentence patterns ) を生徒自身の内部から生み出す過程の練習である。すばらしい発音であるが何を言ってよいかわからないというよりも,発音がまずくても,また表現が稚拙でも英語で言えること,話せることが大切であるということを銘記したい。

 英語教育では,基礎的,基本的事項の定着をめざした言語要素の学習と生徒が自分の意志で,自分の発想で英文を言ったり,書いたりする表現力の育成の両方が望まれている今日,現場で苦労されている先生方に少しでも参考になれば幸いである。


(4)Dr.Satoshi Ishii, Effective Oral communication in English (1976).


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