福島県教育センター所報ふくしま No.32(S52/1977.8) -013/033page
漢字の学習指導について
研究・相談部 芳 賀 常 夫
はじめに
国語科における基礎的な能カを伸ばすために,文字や語句の指導は特に重要視されている。子どもたちも,国語の勉強と言われれば,まず、漢字に仮名をつけることや・書き取リや.意味調べを思いうかべるのが普通である。しかし,子どもたちは、これらの学習をめんどうでつまらないことと考えているのではなかろうか。また,教える側にしても.漢字は読みとりを困難にしているやっかいなもの,排除したいものととらえる傾向があるのではないだろうか。
一方では,漢字を習得させるためにかなリの時間がとられ,ことがらの読みとりや,要旨・主題のは握や,描写や叙述のすぐれた箇所を味わうことなどにかける時間の不足をなげくことも多い。
それで,漢字を効果的に指導するにはどうすればよいかについて,低学年を主として取リあげ考察してみたい。
1. 実態に応じて指導すること
漢字の指導において,ひとリひとリの習得の実態に応じて指導をくふうすることが大切である。つぎのような事項については握しておきたい。
・習得している漢宇(音・訓よみ,書き取り)
・教材の新出漢字(よみ)
・前学年までの提出漢字の定着(よみ・書き取り)
・漢字の使用(短文の中で,作文の中で)
・漢字についての知識(部首・画数・筆順・構成など)
調査結果については,誤答傾向を類型化し,それに即して,指導をくふうしていきたいものである。
ここで,子どもの作文の漢字使用状態について考えてみる。
三年生になって (女子) 4月上句
わたしたちのえんそくの日雨がふってしまいました。せっかく たのしみ にしてたのにと おも いました。だけど, せんせい が「こんどのえんそくは,6月1日」といいました。わたしはがっかりしました。
けれどその日かそのつぎの日かわからないんだ、 せんせい が,お てがみ をくばった。わたしはすぐにみてみると,うんどうかいが5月15目にきまったことが か いてあった。わたしはうれしくてこころの中でばんざいとさけんだ。
うちにかえったら おも った。うんどうかいのつぎがえんそく,とてもうれしくてうちの中で「ばんざ一あい。」とさけんでしまった。そのときおかあさんに「こら。」しずかにあそびなさいとゆわれた。(以下略)
この文章は「三年生になって考えていること」について書かせたものである。5分ほど話し合いをして,40分程度で書きあげたものである。字数は620であり,漢字は23字使用している。3.9%の使用率である。これを文化庁がまとめた全国調査の数値とくらべてみる。
(昭.47)
表1 漢字使用率[都市]
(総数字を100として)
学年 1年 2年 3年 4年 5年 6年 使用率 0.1 2.0 4.3 7.9 11.0 13.1 この学級の平均使用率は4・1%である。この子は学級の平均よりは少し下であるが,表とくらべてみると,4月始めであるから,普通の使用率であると言える。
しかし,「楽,思,先生,手紙.心」は2年までに学習した漢字である。しかも生活語として使用度も高いものであリ,使用してもよいと考えられる。もっとも,この作文は書かせたままのものであリ,推考させることによって,訂正され,漢字もふえるものと思われるが,書ぎつづる最初の段階で語として漢字を思いうかべ使用できるような指導法がくふうされなければならない。
なお,文章表現を通しての漢字指導については,書かせるねらいを損うことのないようにしなければならない。漢字で表記することを意識しすぎて,書きたいことをせいいっぱい書けないようでは困るわけである。読みなおしの段階で,漢字に直せるものは直すようにすべきであろう。
2. 教科書教材(漢字に関するもの)の指導こついての留意点
(1) 1年
・ 1学年配当漢字のうち,70字ぐらいの漢字を読み,その大体を書くこと。
・ 文の中で漢字を適切に使うこと。上記の二つが漢字に関する指導事項である。
<1年の漢字教材>
(一) えと かんじ
ここでは「山 木 川 水 日 口 手 田」の8字を取りあげている。絵と篆書と楷書とを結びつけ,漢字の成リ立ちをわからせようとするものである。興昧を持たせ,身近かなことがらと関連させて取リ扱うことが大切である、また,音,形,と共に一字で意味を表すという特性のあることを気づかせることである。
更に,これらの漢字は,字母とLての働きも大きいの