福島県教育センター所報ふくしま No.32(S52/1977.8) -015/033page
中でも,(3)の語源的方法は子どもの興味をそそるだろう。(4)の部首に関心を持たせることは,漢字の構造をは握することや,字典の引き方の基礎として大切である。
3年生は,漢字指導上大事な時である。表-2でわかるように,3年から落ちこみ始めるからである。
この原因としては,学年別配当漢字が,2・3年からぐんと多くなることによるものと考えられる。1・2年でよく習得してこないと,こなし切れなくなるのである。また,3年からは音で読むことが多くなる。しかも音の表す語意はその字の訓よりも範囲が広いので,むずかしくなる。耳なれない熟語も増加する。以上のようなことをふまえて,漢字教材を充分生かすように扱うことである。
表3
書き 読み 1年の漢字
2年の漢字
3年の漢字
4年の漢字
5年の漢字
6年の漢字93.4
86.2
76.1
57.0
59.2
56.896.5
96.8
93.0
90.O
88.9
83.8
昭和47年・文化庁発表・学年配当漢字習得率3. 読解指導における漢字の取り扱い
つぎのような段階に位置づけて指導することが考えられる。
(1) 全文を読み通す段階で
わからない漢字は文脈の中で考えさせ,字典等を利用して調べさせる。既習文字との関連から,類語,反対語,同義語などについて理解させる.筆順を指導する。(2) 各段落・部分をくわしく読む段階で
中心語句,重要漢字のみ,文脈に即して意味用法を理解させる。取り扱う漢字はごく少数にし,読みとりのすじからはずれたり,中断しないように配慮する。(3) まとめの段階で
新出,読み替え漢字を中心に読み書きの練習をする。音訓,字形,画数,筆順,同音語,類義語,反対語などを調べさせる。新出漢字の使い方を練習させる。熟語さがし短文つくり練習。このようなことを,学年,学級に応じて取り上げていく。実際は,(2)の「語」としての扱いが主で,「字」としての扱いは,読解指導の中では容易でないと思う。
4. 取り立て指導
漢字は文章の中に随時出てくるものであるから,その場で,読み,意味を指導することになる。しかし,書き方や使い方までは徹底しにくいようである。それで,確実に身につけるためには,取り立てて指導することが考えられる。これは,系統化をはかり,継続的に行うことか大切なのである。以下,取り立てて練習をさせる場合の効果的な方法のいくつかを,参考までに述べてみる。
(1) 字源方式 字源に即して教える方法,1年3年5年の教科書に出ている。
(2) 筆順方式 新出漢字が出るたび教えていくと誤字が少なく,正しい筆順を覚える。
(3) 部首方式 2年の教科書にでている。
(4) しりとり方式 漢字でしりとりをしていく方法。
学校−校内−内心−心配−配達のようにしていく。部首のしりとりもある。
(5) かるた方式 漢字のカードを並べておいて訓を読み上げ,その漢字を取るというやり方である、
(6) 熟語方式 一つの漢字から熟語をつくらせる。
(7) 類語方式 2年の教材にでている。
(8) 反対語方式 対照語も含めてその対になるものを書かせる。2年の教材にある。
(9) 短文方式 漢字を1つ〜3つぐらい出し,その字を含めて短文を作らせる。
(10) クイズ方式 大きな石かドスンと落ちました。どこに落ちましたか。「寺」というようにする。
(11) 文合わせ方式 漢字を書いてばらまいてあるカードを拾い上げながら,まとまった文章にしていく。
(12) 状差し方式 状差しに読めたり書けたりした字をはがき大のカードに書いては入れるようにする。
(13) 間違い方式 カードに誤字と正しい字を書いておき同時に提示してその反応を見る。
(14) カード方式 表に漢字,裏にかなという簡単なものから,文章体にしたものなど。
(15) OHP方式 語源の図示,合成分解,筆順など。おわりに
漢字が定着するために必要なことは,漢字を見て読む回数が多いこと,漢字を見たり思い出しだしたりして書く回数が多いこと,漢字の意味や類推を行う回数の多いことなどである。また,漠然と読み書きするのでなく,漢字を見たときの緊張度も影響する。このことは,漢字をいつも身近かなものとして,しかも興味あるものとしてとらえさせることの重要さを示している。
要するに,漢字の読み書き能カを高めるためには,その機会を多くとり,そして,単なる繰り返しでなく,系統的,計画的な指導が望まれるわけである。
低学年の指導を主に,教科書の漢字教材の指導について,読解指導での漢字の取りあげ方,取り立てての練習のしかたなどについて述べてみた。このほか,書写指導との関連のことや.漢字を書かせた場合の評価のことなども大事なことである。
漢字の指導には,個々の漢字の成り立ちや意味や構造など,「字」について教える側面と,漢字が組みあわさってできる「語」の意味や用法などを教える側面とがある。前述した三つの指導の場合,上記のいずれの側面の指導を主にねらってゆくのか吟味すべきである。なお,教科書の「漢字学習欄」「漢字コラム」を指導計画に取り入れ活用したいものである。
注)表2には「木」を部首とする字も含まれる。
参考図書 漢字指導の計画と展開(須藤久幸著)
漢字と図形(渡辺茂著)
漢字の学習指導(大阪市教育研究所)