福島県教育センター所報ふくしま No.32(S52/1977.8) -017/033page
そこで,学級指導を通して指導する場合,学習に対する適応度を考慮することが重要であり,学習適応度を「生徒自身が学習する場面において,環境とよく調和を保ち,望ましい関係にあるかの度合であり,行動の特性をも意味している(現代教育用語辞典,天城勲編,第一法規)」 ととらえ,学習技術や方法だけでなく,学習態度,学習環境,心身の健康等学習に影響する要因をも含んで考慮しなければならない。
そのためにグループカウンセリング「相談,協議して指導や助言をグループの場において与える。(現代教育用語辞典,天城 勲編,第一法規)」 をすすめ,適応上の問題を解決させるために援助を与え,精神的健康を促進したり,自己の個性を発見していくことをねらいとした。
このような手法を取り入れることにより,自主性「他に依存することなく,自己の正しい意志によって決断し行動すること(生徒指導の手びき,第一集,文部省)」が身につき,学習習慣「学級や家庭において学業を習得する行動様式が継続的経験によって獲得され,固定化されたもの(生徒指導事典,飯田芳郎編第一法規)」が形成される。
このような心理学や生徒指導上の原理をふまえ.以下のような仮説を設定したものである。
(2) 仮 説
学級指導において,学習適応度に応じたグループカウンセリングをすすめれば,自主的な学習習慣が形成されるであろう。
3. 計 画
(1) 方法 一群法による。
(2) 対象 3年5組 36名(男18,女18)
(3) 組織 個人研究
(4) 日程
5月 実態は握,問題点と原因の考察
6月 研究主題と研究仮説の設定,研究計画の作成
7月〜8月 文献研究,検証計画の作成
9月〜11月 事前テスト,検証授業,事後テスト
12月〜1月 データ処理,研究報告書作成
2月 研究発表
4. 概要と考察
(1) 経 過
(1) 文献研究
上述のような仮説による検証をすすめるために,以下のような手だてと具体的方法をとってすすめたものである。ア 生徒ひとりひとりの能力を育てるために学習習慣の個人差に応じた援助・指導をすすめるにあたって,AAI(学習適応性検査,辰野千寿著,日本図書文化協会)により,生徒の学習についての実態を客観的には握する。
イ 学習適応度に応じたグループを編成するにあたってAAIの4領域にわたる検査を実施し,その総合的な学習適応度をとらえ,その到達の度合に応じて以下のようなグループを編成する。
(ア)上位グループ 2グループ(A,B)
(偏差値 55以上 段階 4, 5)
男 6名,女 6名 計12名
(イ)中位グループ 2グループ(C,D)
(偏差値 45〜54,段階 3)
男 6名,女 6名 計12名
(ウ)下位グループ 2グループ(E,F)
(偏差値 44以下,段階 1, 2)
男 6名,女 6名 計12名
ウ 自分の学業生活のあり方を自已評価させるとともに,学習態度についての自己理解を深めさせ,望ましい学習態度形成のための自己指導を促すようにする。
エ グループカウンセリングのすすめ方
(ア)上,中,下位群毎にグループ,個人の両面より個人理解を深め,援助,指導の適正と発展をはかる。
(イ)自己の当面する問題点を気楽に話すようにさせ,核心に触れたカウンセリングをする。
(ウ)自己評価表により変容の実態を記録する。
(2) 事前調査
学業生活の実態を客観的にとらえるために,AAIを実施するとともに,意識の度合いをみるため意識調査も行なった。
(3) 検証授業計画(4時間中1時を提示)
ア 題材名 自主的学習はなぜ重要か
イ 指導計画 (4時間)
(ア)自分の学習はこれでよいのか…………1時
(イ)自分の学習には問題が多すぎる………1時
(ウ)自分には能力がないのか ……1時(本時)
(エ)本当の学習とはなにか…………………1時
ウ 本時の指導
(ア)ねらい
今後努力しなければならない点と,効果的な学習方法を理解させ,自主的な学習態度や学習習慣を身につけさせる。
(イ)準 備
11/24 前時までの活動をまとめさせておく。
11/26 AAI,意識調査結果について考えさせておき,学習の阻害要因を個人毎には握させておく。