福島県教育センター所報ふくしま No.32(S52/1977.8) -020/033page

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(1) 結果の考察

 事前テストとしてAAIと意識調査を9月上旬に実施し,同一問題で事後テストを11月下旬に実施した。

ア. AAIの結果の考察(ア) 1.学習態度について
 精密な学習計画を立て,それをやりとげようとすることができず,そのこと自体が,学習意欲の低さとなっている。
これは,中,下位群に多くみられていたが,事後においては,中,下位群とも74.8%に伸び有効度指導も70.2%となり効果が認められた。

(イ) 2.学習技術について
 ノートのとりかたについては,上位群は伸びを示したが,覚え方,考え方については過去の学習のし方が身についており,短期間の指導では効果をあげることはむずかしいが,有効度指数61.8で,その効果があがりつつあり時間をかけて指導すれば,効果がみられるであろう。

(ウ) 3.学習環境について
 学習環境については,さほど問題点はなく,事前でも67.6%を示している。友人関係の指導では事後が85.1%まで伸びてきたが,有効度指数が54.0で,友人関係のむずかしさを示しているともいえる。グループカウンセリングとともに,教育相談でも重視していかなければならない。

(エ) 4.精神,身体の健康について
 不安傾向と神経質の徴侯が多くみられ,カウンセリングにおいても内面的なところまで入っていこうと努力はしたが,有効度指数43.6と効果はみられなかった。
これらは中学3年生としての時期的な面も十分考えられるが,個別に十分指導しなければと思う。上位群の生徒の中にこれが原因で学習が身につかない生徒もおり,今後も指導を続けなければならない。

イ 意識調査結果の考察

(ア) 学習態度についてはAAIと似たような結果が得られた。計画を立てていなかった生徒がカウンセリングにより,細かい計画が学習意欲のこうように大きく影響することを自覚し,有効度指数90.4と効果がみられた。
他の問題についても有効度指数が70をこえ指導が有効であったと認められる。

(イ) 学習技術についても有効度指数60.9で,AAIの61.8と大差なく,指導の効果があがりつつあると考えられる。だが学習習慣を形成するには,自覚をうながすことが重要でテクニックのみでなく学習の意義を十分理解させる必要がある。

(ウ) 学習環境については学校全体のふんい気が事前で30.6%であり,事後になっても53.3%までの意識の伸びにとどまっている。
これは指導するうえでおおいに反省しなければならないと思う。
"人は環境によって作られる”のごとく,良い学習環境を整えることが自主的学習習慣を形成するうえで,大きな役割をしめていることは言うまでもないことである。
家庭においては,独立した勉強部屋があり(100%)家族の人も協カしてくれている(86.1%)ようである。また,学習態度,技術に比して,事前に整っているせいか,有効度指数の伸びはあまりみられなかった。

(エ) 精神身体の健康については,指導の面でも考慮したが,身についている内面的な性格等は,なかなか変容せず,長期にわたる教育相談の必要性を痛感させられた。
(1)(3)(4)などは有効度指数が低く,今後も十分指導しなければならない一点である。

(3) 結 論

 事前,事後テストの結果と検証授業から,次のことをとらえることができる。

(1) 仮説による方法の導入は下位群の生徒には意織を高掲させるうえで,効果がある。

(2) AAIなど広範囲,細部にわたる客観的資料をもとにカウンセリングを実施したことは信頼性に富み,意識高揚のうえで効果的である。

(3) 学習態度,学習技術など比較的容易に変容がみられるものには仮説は有効であるが,学習環境,精神的な面には個別指導を重視しなければならない。

5. 反省と今後の問題点

(1) 検証する段階で,事前調査の結果から「何をどのような方法」で指導すればよいか迷う場面があったので,今後研究していきたい。

(2) 仮説による授業過程の最適化の努力を今後も続ける必要がある。

(3) 調査,検証する場合,評定尺度の設定とともに,時期,客観性や妥当性などに問題があると思われるので,今後さらに研究を深めていきたい。

6. 参考文献

教育研究法序説(実践)   福島県教育研究所
中学校特別活動事典    飯田芳郎編 第一法規
生徒指導の手びき      第一集 文部省


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