福島県教育センター所報ふくしま No.33(S52/1977.10) -002/026page
小 学 校 教 材
社会科におけるTPの製作と活用巻頭言
第1研修部 境 野 啓 二
1. はじめに
次の表は,昨年度実施した小学校社会講座に参加した先生がたを対象に行った「教育機器活用状況調査」の集計表である。(文中の調査は同じ参加者79名を対象にしたものである。)
教育
機器OHP スラ
イド録音機 VTR テレビ 8ミリ
映写機16ミリ
映写機活用
割合
(%)100 84 58 16 38 25 20 この表によると教育機器のうち,OHPが最も多く活用されていることがわかる。しかし使われているTPを調査すると最も初歩的な板書代替法(73%)が多く,TPについての研究の余地が残されている。そこでOHPがよりよく活用されるために講座「社会科におけるTPの製作と活用」(実習)を運営しているが,その実践を中心に説明を加え,参考に供したい。
2. OHP・TPの教育的特性と機能
TPの製作・活用にあたって,まずOHPとTPの教育的特性と機能について理解しておかねばならない。
(1) OHPの教育的な特性と機能
明るい教室でも,鮮明な拡大映像が得られる。 学習者と対面した形で教材の提示ができる。 操作に専門的技術など必要としない。 (2) TPの教育的特性と機能
さまざまな方法で比較的容易に自作できる。 作り方をくふうすることによって多彩な表現ができる。 教師のアイデアを生かし,学習や指導のねらいに即した自作教材を容易にする。 教師や学習者のその時の状況に即して自由にコントロールできる。 OHPがよく活用される理由は,視聴覚機器としての特性をもつばかりでなく,以上の長所をもっており,あわせて比較的安価であって,いずれの学校にも設置されていることがあげられる。
3. OHPの設置・活用状況
OHPの設置状況を調べると2学級に1台の割合になり,年々増加していることがわかる。更にそのOHPの活用状況を調べた結果,よく活用する(ほとんど毎時使用する)18%,時々活用する(研究会などに使用する)75%,活用しない3%であった。このようにOHPの設置割合は高く,活用されていることがわかる。
4. TP活用状況
時々の活用とはいえ,3分の2以上の教師がOHPを活用していることがわかったが,その時活用したTPは,市販されたものであるか,自作したものであるかを調査したところ,市販物の活用11%,自作物の活用18%市販物自作物両方の活用70%という結果がでた。
自作している教師は,自作物,市販物両方の項目を指摘した者も含まれるので90%近くの教師がTPを自作していることになる。講座は,このような状況にあって社会科におけるTPの製作とその活用のあり方についてメスを入れようとしたものである。
5. 社会科におけるTPの製作
社会科におけるTPの製作と活用にあたっては,次の3点をふまえ,教師の創意工夫を生かしながら実践していかなければならない。
TP(OHP)による表現法 社会科における学力とTP 児童の実態とTP (1) TP(OHP)による表現法
次の図は,TP(OHP)の表現法を示したものである。その中から社会科において現在活用可能と考えられるものをとりあげ,簡単ではあるが説明したい。
1) 記入消去法
この表現法は,OHP利用上もっとも単純な方法であり,あとで消去することを前提とした黒板の機能を拡大したものである。記入の過程をつかませることは社会事象の成りたちを説明するにも効果的であるし,児童の意見の交換やまとめにも利用できる。他の表現法と組み合わせて活用することによって効果が増す。