福島県教育センター所報ふくしま No.33(S52/1977.10) -003/026page

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 2) 合成分解法(オーバーレイ法)

この表現法は,OHP独自の領域を示す代表的な方法であり,2枚以上のシートを重ね合わせたり,取りはずして合成,分解の妙味を生かすものである。社会科の場合もっとも効果的なものと考える。つまり合成することによって単純なものから複雑なものの説明ができるし,分解することによって複雑なものを単純なものとして説明できる。更に系統・関連を明確にできるなど,社会的思考をさせるのに都合がよい。

 3) 具体物置換法

この表現法は,具体的事物を提示するものであって,これによって学習に対する意欲・関心を刺激し理解を深める。社会科の場合具体物は投影できないので,これに似せたものを利用し,空間的な理解などに役立てることができる。

 4) 動画的投影法

この表現法は,アニメーション的な画面によって,興味深く,楽しい学習を展開させようとするもので,特に低学年の学習に活用することができる。

 5) 流動表示法

この表現法は,偏光シートや万線シートと偏光回転板によって画面に流動状態を起こすものである。これによって学習内容の印象づけを強めようとするものであって,社会科においても海流の流れの表示などに活用することができる。

 6) 板書代替法

文字通り板書のかわりにTPを使用するもので,板書事項を前もってTP化しておくことによって時間的ロスを省くことができる。たしかめとかグループ発表などにとり入れることができる。

 7) スライドチャート法

写真,図表,絵図,地図,年表などの資料とともに構造図などをTP化し投影するもので,資料活用能力の育成に大きな役割を果たす。

 8) 全体部分提示法(マスキング法)

画面の部分を提示したり,全体を提示したりして学習者の注意を集中させるのに効果的な方法である。社会科では,構造的,系統的な説明に効果があり,まとめの段階に活用されることが多い。

その他,色彩効果法と指示法があげられるが,単独に行われるものではなく,上記の表現法と組み合わせて効果をあげるものである。

(2) 社会科における学力とTP

「社会科における学力は,目標(社会科)にもとづく学習で養われる,または目ざしている能力の総体と考えられる。」といわれ,そしてその学力構造は,知的能力(理解・知識・思考),技能,態度的能力の三つの概念に分析される。これらの能力の育成とTPの効果的な活用との関連を考えTPを製作しなければならないのは当然のことである。TPが多く活用されるのは,知的能力と技能についてであろう。

社会科の目ざす知識は,「指導目標が示す観点から意味づけられた関連的知識や事実間の構造的なは握によリ得られる構造的(有機的)知識である」といわれるが,TPはこの知識の獲得に効果的な役割りを果すものと思われる。つまり,合成分解法やマスキング法は関連的知識や事実間の構造をは握させるのに容易であるからである。

また社会科の目ざす思考力は,「社会科でねらっている意味を追究していく過程で働く思考力である。」といわれ,地理的思考,歴史的思考,経済的思考など思考の内容によって分類されるが,これには,比較,関連,条件,因果,発展などの思考操作が行われる。この操作をさせるのに有効なTPが製作されるはずである。

社会科の技能は,獲得された理解や知識をもとに言語や動作で外へ表現する働きである。絵地図や図表をTPに書いたり,観察結果を的確に能率よく表現するのにTPが大いに役だつはずである。

 (3) 児童の実態とTP

教材が児童の実態に即して精選されるように,TPも児童の実態に即したものでなければならない。しかし,ここでは,児童の実態をつかむことができないので,低中・高学年にわけた場合の一般的な社会認識の発達段階をとらえ,それに応じたTPの製作についてのべたい。

 1) 低学年

1年生は,感覚や感受性が鋭敏で,周囲のものへの働きかけが盛んであり,特に珍しいものには,何にでも飛びつき,身体でたしかめる傾向がある。2年生になると外界への働きかけの領域が拡大されるとともに焦点づけられ,意味をもって働きかけるようになる。

このような低学年の児童には,興味関心を高めるTPがまず必要である。それには,美しい画面のTPが必要であるし,動きのあるものがよい。大きく単純明解な画面のTPが望まれる。教師の血の通った自作TPはこれに答えることができる。そのTPを媒介としてOHPの特性を生かした教師と児童の対面による話し合いを十分したいものである。

 2) 中学年

3年生は,社会の動きを相互のつながりにおいて見たり,根底にある法則に気づきはじめたりする。町や村の変化に着目してその背後にある条件を考えるようになる。このように次元は低いが抽象的思考をはじめる。4年生になると目立って活動的になり,行動範囲が拡大し,人々のくらしや事物・事象の相互関係をとらえようとする追究は一層強いものになる。

したがって,中学年のTPは,具体的な事象や行動の中から,抽象的な理論をつかませたり,理論を具体的な事象や行動の中に実証させることのできるようなものでありたい。また,中学年の社会科は,社会科の本質に沿った学習展開が容易であり,社会科学習の基本を身につ


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