福島県教育センター所報ふくしま No.33(S52/1977.10) -004/026page
けさせることができる。TPを児童に自作させ,思考させる機会を多くとりたいものである。
3) 高学年
5年生になると自分を考えるようになる。いろいろな知識を集めることに興味をもち,科学的合理的な裏づけをしようとする傾向が強く,みずからの経験を整理し秩序づける。しかしおとなの考えによりかなり簡単な結論を出して安易に割り切ることが多くなる。6年生になると社会を見る目は細かく,鋭く,深く,合理的になっていく。複雑な社会の実態を総合的具体的に考えていかなければならないことに気づく。しかし,抽象的概念的な知識の吸収にのみ終る傾向の児童もある。
このような高学年に対しては,単なる知識の獲得中心の指導をさけ,考察の視野を広くするように指導しなけれぱならない。したがって,TPは広い視野に立った情報の提供てあり論理的多面的な思考を促すものが中心とならなければならない。
以上(1)TP(OHP)による表現法(2)社会科における学力とTP(3)児童の実態とTPについて述べてきたが,これらのは握のもとに,教材の本質を生かすよう創意工夫をこらしたTPを製作すべきである。講座では,TPを製作するために用具や技術的なことからについても触れたが,ここでは省略したい。
6. 製作したTPの活用
(1) 授業案とTP
いかに正確で美しいTPでも授業に活用されなけれぱ価値はない。講座では前日に目標分析・教材分析をした上で授業案を作成する演習を行っている。その授業案作成の際にTPの位置づけをしているので授業と密着したTPができる。これらの作業はTP製作上の必ずの条件である。本時の目標を効率的効果的に達成させるのにどんなTPがよいのか。理解させるのか思考させるのかまたは技能を身につけさせるのか授業内容を確認し,それに適したTP表現法を考えるのである。ここにはじめて授業案にTPが位置づけられたことになる。
(2) TP活用票の作成
OHP活用上の間題の中に「使えるTPがない」ということがあげられる。これは,予算がないので市販のTPが買えないということであり,他人の作ったものは使えないということである。そこで後者に対する改善策の一つでもあり,良いTPを製作し,効果的に授業に生かすようにするため「TP活用票」の作成をすすめたい。
1) TP活用票
次のような様式を厚紙に書き(カード化),TPとともに学年で保管し活用する。 2) TP活用票作成のねらい
TP活用のねらいを明確にする。 授業への効果的な位置付けをはかる。
TP活用のねらいを十分に発揮させる。 だれでもそのTPを活用できる。 TP保管に便利である。 TP製作にあやまりがない。 3) TP活用票の書き方
整理番号――学年・単元・題材などでわけ,記号化(例 3―A―5)するとよい。 ねらい――授業のねらいではなく,TP活用のねらいを書く。 略図案――TP一枚ずつの略図を順序正しく書く。 指導内容・方法――TPを活用して指導する内容と方法を書く。 留意点――TPを活用する際の留意点を書く。 講座では,このTP活用票に基づき,TP下書きを書き,その下書きにあわせてTPを自作する実習を行っている。実習を通して基本的なTP製作技術を習得してもらおうというわけであり,でき上ったTPは,実際に投影してまちがいを点検しその成果を発表しあっている。
7. おわりに
製作と活用と題して述べてきたが,頁数の関係から実例を示すことができず残念である。しかし,全文を通じておわかりいただけるように定まった社会科のTPがある訳ではなく,教師の創意工夫にまつところが多いのである。
活用後は常に教師・児童の立場から見て授業に役立ったのか(TP活用のねらいが良かったか。ねらいに即応していたか。表現法,製作技術は良かったのかなど)評価反省を加え,そして改善していくことが大切である。
参考文献
小学校社会科指導事典 第一法規 授業研究大事典 明治図書 学校教育全書(8)社会科教育 全国教 育図書 OHP学習とTPの作り方 岸本唯博編その他