福島県教育センター所報ふくしま No.33(S52/1977.10) -005/026page
小 学 校 教 材
「ウキクサによる成長の条件調べ」についての一実験
――基礎資料を中心として――
第2研修部 遠 藤 俊 博
1. はじめに
学習指導要領5学年A領域の学習内容に,植物の成長には日光・温度などのほか肥料が関係していることを理解させるとあり,イネや水草の成長と環境の関係を調べるようになっている。この学習の展開にあたっては,単に水草が日照時間や水温,肥料の多少によって増え方に違いができることを理解させるのではなくて,これまで学習しているイモ,イネの成長と関連させ,植物が違っても環境からの影響の受け方は似ていることに気づかせ,植物の成長と環境の関係を一体としてとらえようとする態度を育てることが大切である。新学習指導要領でも,植物の成長は日光,肥料などによって影響を受けることを学習するようになっており,イネや水草というように具体物は示されてないが,短期間に結果を得るにはウキクサの増殖成長が教材として適している。
ウキクサは池や沼,水田の水面に浮いている単子葉の多年生草本で,福島市周辺では5月下旬頃から水田に見られ容易に採集することができる。
体は扁平な倒卵形で長さ5〜6mmほどあり,表面は緑色でなめらかで,水をはじき,裏面は紫がかっており中央から10本ほどの細い根を下垂している。暖かくなると繁殖が盛んになり,短期間で水面をおおう。
同じウキクサ科にミドリウキクサがある。これは卵形状広楕円形で長さ2.0〜3.5mmほどで,裏面から1本の長い根を下に垂らす。2〜4個の葉状体がくっついて植物体をつくっており,ウキクサ同様よく繁殖するが,ウキクサに比べて葉状体が小さいので観察しにくい面がある。ミドリウキクサも水田によく見られる。
ウ キ ク サ
ミドリウキクサウキクサの個体群の最大増殖力について生嶋功氏(1958)年の実験によると次のようである。
(くり返し初期密度にもどす実験で得られたウキクサの最大増殖)
ウキクサの増殖成長と環境の関係を調べる実験をするときは,ウキクサがいくつかの葉状体がくっついて1個体をつくっているので,ひとつひとつ離して,葉状体を単位として数えるのがよい。植物個体数をもとにしたのでは,これを構成する葉状体数が実験処理によって変わるため葉状体数より精度がおちる。はじめに入れる葉状体の数は3〜10個位がよい。この時,大きさ,色調,根の長さなど外部形態のそろったものを使用するようにし,裏側も調べて小さい葉状体がついていたら,それを取り除くようにする。
増えた数を数える場合は,出芽した葉状体はどんなに小さくても肉眼で認められるものは数に入れるようにする。培養液は測定のたびごとに新しい培養液に取り替えるのが望ましいが,水面にゴミや藻類などの皮膜ができ汚れのひどい時に替えるようにすれぱよい。
2. ウキクサの増殖成長と肥料の関係を調べる実験
ウキクサの成長と肥料の関係を調べる実験方法として教科書では,池の水(または田の水)と水道水を使って比較するようになっている。しかし,この方法で実験してみると必ずしも田や池の水を培養液とした場合の方が水道水より成長がよいという結果にはならない。
(6月上旬) 日 数 0 2 4 6 8 10 12 池の水 5 5 8 10 14 14 15 水道水 5 6 9 12 15 15 16 同じように,田の水,魚を飼育している水そうの水と水道水を培養液として実験してみたが,増殖成長にはっきりした差異は得られなかった。