福島県教育センター所報ふくしま No.33(S52/1977.10) -007/026page
同じであることを確認する。結果は次のようになった。
(7月上旬) 日 数 0 2 4 6 8 1日光をあてたもの 10 18 26 37 52 半日光をあてたもの 10 12 14 16 22 光をあてなかったもの 10 10 10 10 10 ウキクサの増殖成長は,日照時間に大きく影響され,光をまったくあてなかったものには,出芽は見られない。この実験は大型水そうなどでなくて,小さな昆虫飼育箱や角型水そうなどでも十分なので,班ごとに準備し,日照時間をいろいろと変えて実施してみるのもよいと思う。
4. ウキクサの増殖成長と水温の関係を調べる実験
光と肥料の条件を統一して,水温を変えウキクサの増殖成長の違いを調べる実験である。
気温が20℃以下の時は,サーモスタット付きのヒーターで,一方の水温を30℃位に上げる方法,気温が25℃以上であれば,水道水を流しつづけることによって温度を下げるようにするのがよい。
(7月中旬 水温は測定時12:00のもの) 日 数 0 2 4 6 8 ウキクサ 10 22 29 38 47 水 温 23.0 23.5 25.0 24.5 25.5 水道水
で冷却ウキクサ 10 20 21 30 36 水 温 19.5 20.0 20.0 19.5 20.0 水道水を流しつづけると水温を20℃前後に下げることができ,気温が25℃を越える状態であれぱ,ウキクサの増殖に差ができる。しかし,この方法では,水道水を流しつづけることに難がある。
またヒーターで一方の水温を上げる方法にしても,学校が無人化され,夜間は電源を切断する状態にあっては実施しにくいものと思われる。
水道水を流しつづけ温度を下げる装置そこで,ビーカーにガーゼを巻き,常に水でぬらした状態にしておいて,気化熱で水温を下げる方法が考えられる。この方法では,温度がなぜ下がるか,その原理を理解させることに間題はあるが観察の都度温度を読みとらせ,温度に差があることを確認させるようにすればよい。
ビーカーにガーゼを巻き気化熱によって温度を下げる使用する容器は 500mlのビーカーが適当である。ビーカーの底に一方は黒ビニールをひき,他方は白いものをひくようにするとさらに温度差をひろげることができる。
(7月,水温は測定時12:00) 日 数 0 2 4 6 8 ガーゼを
巻いたま
まの装置ウキクサ 10 18 30 37 53 水 温 24.5 28.0 27.5 30.5 23.0 ガーゼを
水でぬら
した装置ウキクサ 10 16 28 33 48 水 温 24.5 26.0 24.0 27.5 21.0 なお,これは冷房された室内での実験データである。この装置では,温度差が小さく,増殖成長に差ができにくい。日のよくあたる風通しのよい所に置き,温度差を大きくするような工夫が必要である。
5. おわりに
ウキクサの増殖成長の実験で条件を変えてやっても,増えるには増えたが同じ結果になってしまってうまくいかないという話をよく聞く。結果が明確に出ない実験では教材として問題がある。これは,6月から7月末までの2ケ月間,ウキクサの増殖成長と肥料,日照時間,温度との関係について,くり返し実験した結果の資料である。温度と増殖成長の実験においては,なお問題は残るし資料としても不十分である。例えば,ウキクサの増殖成長と適した温度範囲,日照時間の関係などである。
ウキクサは,どこでも容易に採集でき,短期間に増殖成長する性質があることから,理科教材としていろいろ利用できそうである。