福島県教育センター所報ふくしま No.33(S52/1977.10) -008/026page

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小 学 校 教 材

たて笛を中心としたアンサンブル指導

第1研修部 古  関     齊

はじめに

たて笛のアンサンブルは,昭和44年(現行学習指導要領)以降,創造性の開発や基礎指導の重視から音楽教育の場に大きく取りあげられてきた。

児童のたて笛への興味や関心は強く,美しい音を自らの耳でつくりあげる過程やひとりひとりが自分のパートに責任をもって他のパートと協調し,創造的に表現する喜びを味わうなど,児童が主体的に学習活動に参加できるものとして,たて笛のアンサンブル学習は高く評価され音楽的効果をあげてきた。しかし,その反面たて笛のアンサンブルは音が合わせにくいとか,表現力に乏しく音量感に欠けるなどの認識の不足とも思われる声が聞かれるが,たて笛の特性に対する理解の浅さや系統的・計画的な指導の不備が,たて笛アンサンブルの音楽的な発展を阻害していると思われる。

たて笛を中心としたアンサンブルを授業の中でどのような内容や方法で展開していったらよいか,一例をあげ参考に供したい。

1. たて笛の特性とアンサンプルの編成

教師はたて笛の特性や音楽的発展性・方向性について十分な認識をもつことが大切である。

(1)  たて笛は作音楽器である。自らの耳で美しい音や正しい音程やリズムをつくりあげる楽器である。
(2)  たて笛は完成された楽器で,独奏からアンサンブルまで巾広い音楽活動ができ,より高度な音楽へと発展させることができる。
(3)  たて笛はアンサンブルに最適な楽器である。簡単なアンサンブルから本格的なリコーダー・アンサンブル,さらに大編成のリコーダー・オーケストラまで発展させることができる。
(4)  たて笛の音楽から求めるものは,華やかさやダイナミックな表現ではなく,素朴で明快な音色と純粋なひびきによる軽快さと落着いた静かな美しさの音楽である。

たて笛のアンサンブルで最も理想とする楽器編成は,弦楽合奏にも相当するソプラノ,アルト,テナー,べ一スによる四声体のリコーダー・アンサンブルであるが,小学校の授業での編成は次の6つがあげられる。

(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
 ソプラノ笛1,2+ピアノ伴奏
 ソプラノ笛1,2+リズム打楽器+ピアノ伴奏
 ソプラノ笛1,2+有音程打楽器+ピアノ伴奏
 ソプラノ笛1,2+アルト笛
 ソプラノ笛1,2+アルト笛+ピアノ伴奏
 ソプラノ笛1,2+アルト笛1,2

たて笛とリード楽器のアンサンブルは,次の旋律を演奏してみるとその特性の違いやひびきの不調和がよく理解されて,楽器編成の仲間入りできない理由がわかる。

楽譜

リード楽器を加える場合は,次の点に留意する。

(1)  同一旋律はさける。オクターブでもよくない。
(2)  副旋律でも主旋律と同じ動きをしている場合もさける。
(3)  対立的な旋律の場合は比較的よい。
(4)  分担奏で前半たて笛,後半リード楽器のように音色の変化を求める場合はよい。

2. アンサンプルのねらいと計画

アンサンブルは,音楽を通してお互いに心の交流を深め,認めあい,生かしあってひとつの音楽を表現することであるから,アンサンブルの学習を進めることは,教師と児童,児童と児童との心のふれあいをいっそう深めるとともに,児童の音楽への関心と学習への意欲を喚起し,ひとりひとりの表現カを高めるのに有効な方法である。アンサンブル学習のねらいをあげてみると,

(1)  音楽する喜びや楽しさを味わわせる。歌唱で味わうことのできない器楽音楽の美しさや楽しさを味わうなかで,音楽する喜びを体得させる。
(2)  アンサンブル学習を通してひとりひとりの表現力を高めるとともに,協力して美しい音楽を創り出す喜ぴを味わわせる。
(3)  児童が主体的な学習に参加する態度を育てる。

教育はつねに意図的・計画的に目標を目指し,実践されるものであるから,アンサンブル学習も1学年にとどまらず,長期の展望に立った明確な目標と計画が要求される。

学習目標

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