福島県教育センター所報ふくしま No.33(S52/1977.10) -020/026page
<特別活動シリーズNo.3>
望ましい集団活動の指導 (そのIII)
第1研修部 大 草 栄 治
4. 望ましい集団活動と人格形成
(1) 人格の構造と集団活動 特別活動の基本的な指導方法である「望ましい集団活動」ということについては,すでにのべたとおりであるが,一体どんな理由から「望ましい集団活動を通して」ということを総括目標の中に位置づけているのかについて明らかにしなければならない。 このことを明確にするためたは,特別活動の究極の目標である「人格の調和的発達を図る」ということとのかかわりあいを重視して考察をすすめる必要がある。 なぜならば,集団活動と人格形成とのかかわりあいについてじゅうぶんにとらえなけれぱ,特別活動の目標達成をめざした実践をすすめることは不可能であり,やってはいるが実らないということになりかねない懸念があるからである。 1) 人格の構造 人格(パーソナリティ)という言葉は,日常的にたいへん広く使われているし,.その語義は極めて多岐にわたっている。 そこで,オールポート(米・心理学者,1897〜1967)は,「このようにすり切れた概念に,再び生命をふきこむ唯一の方法は,この言葉の歴史をたどることである」とし,語源である「ペルソナ」の意味からはじめて,哲学,倫理学,社会学,心理学等においで使われている「人格」の定義をくまなくひろい出し50余種類の定義を検討,評価し,次のように定義し,構造的にとらえている。 ア 人格とは,「心理・物理的体系としての個人の内にある力動的体制であって,個人に特有な行動と思考とを規定するものである」ととらえている。 「心理・物理的」とは,人格が,心理的なものだけではなく,物理的(神経生理的)なものだけでもなく,心とからだの両方の働きがからみあって統一をなしているということである。 「体系」とは・相互に作用しあっている要素の複合をいい,習慣,情操,特性,行動様式などもそれぞれ一つの体系で,これらの体系は活動していないときも有機体の中に潜在している活動のための潜在力である。 「力動的体制」とは,観念と習慣のバターンを指し,行動を力動的(ダイナミック)に方向づける心的体制のことである。 「行動と思考」とは,個人のなすところのものすべてということである。 「規定する」とは,人格は,何ものかで「ある」とともに,何ごとかを「なす」ものであるということを意味し,人格を構成するすべての体系は,決定傾向であるということである。したがって,人格は,行動や思考,あるいは環境への適応様式そのものではなく,行動や思考にみられる「独自性」と「一貫性」を説明するもので,それらは,環境に対するそのもの独自の適応を規定しているものだとしている。 イ 人格は,独自な統一体であって,本来,分析し難いものであるとしながらも,人格を構成する資質を大きく三つに分けている。 個人的資質 例 他人の文章を読むことができるようになる。 社会的資質 例 互いの立場を尊重しあって,明るい生活をつくりあげることができるようになる。 職業的資質 例 仕事を能率的にすすめることができるようになる。 そして,これらの三つの大きな資質には,それぞれこのほかに多くの細分される資質が含まれるが,これらは人格の構造として,次の三つの領域に属することになるとしている。 認識的領域(やるべきこと)
知織,理解,知的能力というようなことばで表現されるような資質を含む領域感情的領域(やる気)
態度,習慣などのことばで表現される資質を含む領域神経筋肉的技能の領域(やり方)
手技的技能の領域2) ともに学ぶ集団活動 人格形成ということを人格の調和的な発達を図るということとしてとらえるならぱ,児童生徒の自己形成力(自己実現)に期待しながら,自己発達を促すための教師の働きかけをどうするかということが