福島県教育センター所報ふくしま No.33(S52/1977.10) -023/026page
いたが,ものの一分もたたないうちに,「母が自分の腹痛を信じてくれない」,「自分でアルバイトした金の中から治療費を捻出して,母に内緒で,物理療法を受ける回数を増やしている」,「最近,父は,自分に対して本気になって相手にしてくれない」,「妹まで自分をばかにして,まるで,母親みたいな世話をする」,「自分が,せい一ぱいやったことを,そんなことをするよりも………………と否定される」ことなどを,一気に語るとともに「ぼくは,非常に変った体質で,いつでもどこでも,一度眠ると,よほどはげしくおこされないと目覚めないんです」などと話した。
自分をくわしく知って,自分をうまくコントロールすることができると,生活が楽しくなることを話し,Y―G性格検査について説明すると,快く受けることとなった。
結果は,下の(図―1)のようにAD型と出ている。
(図一1)
また,父母の「親子関係診断検査のプロフィル」は,下の(図―2)のとおりで,(図―3)の「エゴグラムと併せて考えると,父は厳格で子どもの心情を理解する感受性に乏しく,順応を要求しやすい支配的態度をとる傾向にあると考えられた。
(図―2)
また,母親は,これまた子どもの心情を理解する感受性に乏しく,知性や理論的尺度だけで子どもに順応のみを要求し易いタイプであると推察された。
幸にして,本児のY―G性格検査の結果からは,若干の劣等感と外向性がみられる平均型に近いので,「長欠児童生徒類型分類チェックリスト」の結果からみた「家庭型の登校拒否症状」 は,家庭への攻撃と注目牽引の現れと理解した方がよかろうという結論に達し,治療の方針を次のように設定した。
(図―3)
3. 治療方針
1) まず,両親の子どもの心情に対する感受性を高めるための,ロールプレーイングと小集団カウンセリングの実施と,親自身の情緒安定をはかり,本児を受容し易い状況に改善するための自律訓練法の通所実習の他に,家庭でも継続自習の実施をさせる。 2) 母親がある程度改善のきざしがみえたところで,自律訓練法を,他の家族にも実践してもろう。 3) 本児には,週2回,通所させ,自律訓練の深化と虚勢・誇示的言動の消去がみられたところで,段階的登校練習表を自主選択的に作成させ,実践を記録していくようにし向ける。