福島県教育センター所報ふくしま No.34(S52/1977.12) -018/026page

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<研究実践校紹介>

体力向上のための,運動の特性をとらえた学習指導は,どのようにしたらよいか

――器械運動で,できない子をなくすための学習指導――

相馬市立桜丘小学校長  渡  部  和  雄
 

 1. 主題設定の趣旨

 本校は,新興住宅地にある普通学級18,特殊学級3,在籍児童数716名,教職員29名によって構成されている学校である。

 昭和49・50年度,福島県教育委員会指定,50・51年度,相馬市教育委員会指定の学校体育研究校として,標記研究主題のもとに,体操・器械運動の領域を中心に,全教師が共同で研究にあたってきた。

49・50年度の研究実践の評価アンケートによると,
  • 研究主題に全教師が意識的に取り組み,教師としての専門性を高めることができた。
  • 各研究部の結果や協力がうながされ,研究を通して,かなりの人間関係を高めることができた。
  • 研究仮説を検証するための授業研究を数多く行なった結果,指導カが向上し,児童の体力・技能の向上にも結ぴついた。
  • など,研究の成果が認められた。反面,次のような問題点が指摘された。
    (1) 技能の個人差が大きく,できない子が目立つ。
    (2) できない子の原因分析がよくなされていない。
    (3) 個人に適応した指導がよくなされていない。
     できない子には,体力面,技能面,精神面などの原因があるが,器械運動の特性でもある,わざが「できる」「できない」がはっきりしているため,特に中・高学年になると,器械運動に対する興味・関心を失ってしまい,いっそう個人差が大きくなってしまう。
     そこで,51年度には,49・50年度の研究実践をふまえて,個人差を少なくし,できない子をなくすため,その原因を分析し,個人の能力差に応じた指導を工夫するために,「器械運動で,できない子をなくすための学習指導」という,サブテーマを設定した。

     2. 研究の仮説

     器械運動で,できない子をなくすために,
    (1)  器械運動の特性をとらえ,基礎的,基本的な技能の要素をふまえながら,系統的,段階的指導の研究をする。
    (2)  できない子のつまずきの原因を体力的,技能面,精神面から分析し,それに即応した具体的な治療指導を行う。
    (3)  できた喜びや満足感を与えてやる。
     以上について,ブロックの授業研究会や職員協議会,実技研修会を通して実践研究すれぱ,学習指導が充実し,できない子はなくなるであろう。

     3. 研究の内容と方法

    (1) 研究の内容
     できない子のための指導法の工夫(5月〜1月)
    (ア)  できない子の実態調査と原因分析
    (イ)  個別指導計画の作成
    (ウ)  検証仮説の設定
    (エ)  できない子をなくす指導を配慮した学習指導案の作成
    (オ)  検証授業の実践
     できない子の学習のあゆみ(5月〜1月)
    (ア)  記録の累積
     「できない子の指導の工夫と指導上の留意点」の集録作成(2月)
    (ア)  記録の累積によるまとめ
     研究のまとめと反省(3月)
    (2) 研究の方法
     検証授業の実践
    (ア)  検証授業の計画(授業研究)
    5月〜2年,6月〜6年,9月〜4年
    10月〜5年,11月〜1年,1月〜3年
    (イ)  各学年は,全体での授業研究を実施するクラスの前に実験授業を2回,ブロックの授業研究会で実施する。
     実技研修会と併わせた課外特別指導の実践
    (ア)  題材を選定し,ひとつの学年の中で,できない子を全員集め,特別指導を実践しながら,指導のポイントを中心にした実技研修会を行う。
    (イ)  隔週の水曜日,午後1時30分より実施する。
     ブロック研究会,職員協議会の開催
    (ア)  実技研修会の行わない水曜日,ブロック研究会,又は職員協議会を開く。
    (イ)  内容は,検証授業のための事前,事後の研究.できない子の指導の工夫と指導上の留意点についての記録のまとめをする。

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