福島県教育センター所報ふくしま No.35(S53/1978.2) -002/026page
小学校教材
社会科における資料活用と統計グラフの作成について
研究・相談部 佐 藤 隆 昭
1 はじめに
社会科学習で資料の占める役割はたいへん重要である。学習の目標や内容に応じて,教師が適切な資料を提示したり,必要に応じて児童に資料を収集させたり,作成させたりして,その資料をもとに社会事象の意味をは握させ,社会生活に対する正しい理解を得させるようにしなければならない。
実際にグループ学習や家庭学習等で資料づくりをさせる機会も多いが,ともするとグラフの作成が不正確で,見る側に正しく受けとられない場合もみられる。
そこで,資料の活用特に統計図表等を作成させる場合におさえておかなければならない基本的な事項について考えてみたい。
2.資料とは
資料はあくまでも学習の補助手段であり,社会科の学習においてその目的を達成するために学習過程に位置づけられたものである。
これを分類してみると
- (1)地図・掛図類
- 掛図,地図,年表,立体模型,図表類等
- (2)統計類
- 教科書統計,年鑑の統計,教材ニュース,新聞の切りぬき,雑誌の記事,プリント集等
- (3)視聴覚類
- 16ミリ,8ミリ映画フイルム,スライド,紙芝居,絵葉書,写真,録音テープ,各種パンフレット,OHP,テレビ等
- (4)参考図書類
- 図鑑,事典,副読本,郷土資料集,学習年鑑,各種参考図書等
- (5)実地見学
- パンフレット,児童作文等
現実の諸事象も,観察し考察するものであるから資料とも考えられるが,これは除外するのが普通である。
したがって,資料というのはなまの社会的諸事象でなく,諸事象について先人や現代の人々が観察し,調査し,考察した結果や,彼らの製作したものおよび児童の手によるものであるという性格をもっているものである。
3.児童による資料収集・作成・活用のねらい
教師の手によって収集し,選択した資料を児童の前に提示し,それについて児童達に考えさせるだけでなく,資料の収集になるべく児童を参加させることも必要である。なぜなら資料がどこにあるのか目ざとく発見する眼を持ち,収集する手を持たせなければならない。次に重なる資料収集にとどまらせないで,資料の適否,真偽を見きわめる力をつけさせなければならない。
学習の目的と内容に応じてどんな種類の資料を収集したらよいか,資料の確かさの度合いをどのようにして判別したらよいかなど探索的な資料収集の機会を多く経験させるようにしたい。
(1)児童に資料についての興味・関心を持たせる。
学習の中で,児童に資料の興味や関心を持たせて常に資料を用いて問題意識を高めるようにしていなければならない。また資料を求める気持はあっても手近なところに資料が整えられていないと意欲がそがれてしまう。教室の環境構成で壁面等を利用しての資料掲示も重要なことである。
(2)資料を見る力読みとる力をつける。
全体的な読みとりでは表題は何かをつかむことである。資料のあらわしていることをまず表題で明確にさせ,全体を大づかみにさせることである。
次に単位は何かを読みとることである。たて軸は何をあらわし,よこ軸に何をとっているのか,分布図の一つの点は何をあらわしているのか,帯グラフ全体をパーセントであらわしているのか,金額で区切をつけているのかなどである。
部分的な読みとりでは,どこが問題であるのか資料の特徴的な変化や資料のポイントをとらえる力をつけることである。常にこのような観点からの読みとり方を訓練させることが必要である。
つぎは,この資料からは,このことまではわかる がそれ以上のことを知るには他の資料がなくてはな らないというように資料の限界をつきとめるととも に,他の資料を求める意欲をもたせることである。
(3)資料を収集する力選択する力をつける。
資料の限界をつかみ,自分で資料を求めるような意欲が出てくると,身近に多くの資料が目につくよ