福島県教育センター所報ふくしま No.35(S53/1978.2) -008/026page
高校教材
タンパク質の消化とアミノ酸の検出
― ヒヨコの消化器官とその内容物を用いて ―
第2研修部 平 山 宏
1.はじめに
デンプンの消化と吸収については,ヒヨコを使って, その実験方法等を,すでに所報No.14に紹介した。
本年度は,高校理科講座に,「タンパク質の消化」を取り上げ,ヒヨコの消化器官とその内容物を用いて,タンパク質の消化とアミノ酸の検出等の実験を行ってみた。
その内容は,脱脂粉乳寒天平板を用いたタンパク質分解酵素の確認と,寒天平板無色部のアミノ酸の確認,さらに電気泳動法による消化管内容物中のアミノ酸の消長を調べる実験であった。
その後,消化管内容物のタンパク質の消長や,アミノ酸の透過の実験等も行ったので,それらについて,学習の順序にしたがって,その実験方法等を紹介する。
2.学習の順序
ヒヨコの餌と糞の違いを観察しタンパク質の有無を 調べる。・・・ 実験方法(1) ○餌と糞を,ピューレツト反応で確める 餌にあったタンパク質が糞にないことから,どこで なくなったのか ○ヒヨコを解剖し,消化管のつながりと,消化管内 容物を調べる。 各消化管内容物中のタンパク質の有無を調べる。・・・ 実験方法(1) ○小腸中央部からタンパク質が検出されないのはど らしてだろう タンパク質を消化するはたらきはどこにあるだろう か ○そのう○前胃○砂のう○小腸○すい臓
どのようにして調べたらよいか ○タンパク質を混ぜた寒天平板を作り,その上に消 化器官の組織片をのせたらどうだろう 脱脂粉乳寒天平板に各消化器官の組織片をのせてお き一定時間後に観察する・・・ 実験方法(2) ○すい臓をのせたもののまわりに大きく無色の部分 が円状にできている
○前胃でもぼんやりとした無色部ができている
○その他の場所では無色にならない。無色の部分ができたことについて考えられること ○タンパク質が他のものに変ったのではないか
○タンパク質を分解する酵素がすい臓から出ている のではないか。
○前胃からも少し出ているのかなタンパク質はアミノ酸に分解されるといわれるが無 色部にアミノ酸ができているかどうか調べる・・・ 実験方法(3) ○無色部にさしこんだろ紙片は濃い紫色に発色し, 乳白色部のろ紙片はごくうすい紫色に発色した
消化管の中ではどこにアミノ酸が多いか調べる・・・ 実験方法(4) ○小腸前端部と中央部で,7個のスポットがはっき り現われている
○小腸後端部ではややうすく5〜6個のスポットが 現われている
○餌やそのうではぼんやりと2〜3個のスポットが 認められる
○砂のう,直腸では,ほとんどないか,かすかに発 色がわかる程度であるこの実験結果から考えられること ○すい臓から分泌される消化酵素によってタンパク 質が分解されたから小腸前端部にアミノ酸が多い と思う
○直腸ではアミノ酸がほとんどないことから,小腸 で吸収されたのではないか内容物の入った小腸で,アミノ酸が小腸壁から出ぞ かどうか調べる・・・ 実験方法(5) ○小腸壁からアミノ酸は透過できるが,タンパク質 が透過できないのはどうしてだろう。
○タンパク質とアミノ酸の分子の大きさの違いはど うかタンパク質が体内に取り入れられる過程について考える
3.実験方法