福島県教育センター所報ふくしま No.35(S53/1978.2) -009/026page
(1)ヒヨコの消化器官とその内容物のタンパク質の有無
《1》 準 備
○ヒヨコ,解剖用具,シャーレ,時計皿,麻酔びん, 脱脂綿,ガーゼ,駒込ピペット,乳鉢,乳棒,試験 管,電動式遠心分離機,0.9%生理食塩水,エチル エーテル,石英砂,ピューレツト試薬(CuSO4 15g O.2N NaOHlOOml ロッシュル塩4.5g ヨードカリ 0.5g),30%NaOH
《2》 方 法
(ア)解剖のしかた
麻酔したヒヨコの腹面を上にして解剖皿にのせ,羽 毛をよく見水で濡らしたのち,肛門近くにはさみを入れ 腹部を切開し,胸骨を切断して内臓を露出させる
(イ)消化器官の取り出しかた
のどのところで食道を切断し,口腔から肛門に至る までの消化器官(肝臓・すい臓をつけたまま)を切断 しないように注意しながら取り出し,生理食塩水の入 ったシャーレ(直径9cm)に入れ,消化管を切らない ように腸間膜をはがし消化管を引き伸ばす。
消化器官を,そのう,前胃,砂のう,小腸,盲腸, 直腸の各部分に切って,それぞれ小型シャーレ(直径 6cm)に移す,小腸を小腸前端部(十二指腸),小腸 中央部,小腸後端部に分け,さらに,十二指腸からす い臓をはがして,各々小型シャーレに移して生理食塩 水を入れておく
(ウ)試料の作りかた
各消化管の内容物を,それぞれ乳鉢に入れ,内容物 の容量の約2倍の蒸留水を加え,石英砂を少量入れて トロトロになるまでよくすりつぶす,それを遠心分離 機(2000回/分で2分)にかけ,その上澄み液を試験管 にとり,残滓液は別の時計皿にとっておく
餌と糞も同様にして時計皿にとる。ただし餌の場合予め水に浸して柔かくしておくとよい。
(エ)ピューレツト反応
上澄み液2mlを時計皿にとり,30%NaOH3滴加え ピューレツト試薬を5滴加えてタンパク質の有無を調 べる
《3》 結果と考察
表1 消化管内容物のピューレット反応
上澄み液の反応 残滓液の反応 餌 + うす紫色 + 紫色 そ の う + うす青紫色 + 紫色 砂 の う +− ごくうす青紫色 +− ごくうす青紫色 小腸前端部 ++ 紫色 ++ 赤紫色 小腸中央部 − 茶褐色 − 青い褐色 小腸後端部 − だいだい色 − 青色 直 腸 − 緑色 − うす青色 糞 − うす青色 − うす青色 ※ 反応結果 +−:ごくわずか反応,+:反応あり, ++:反応顕著,−:反応なし
※ 生後25日の雛で,餌は配合飼料(成鶏用)
表1から,タンパク質は小腸前端部まではあるが,小 腸中央部からなくなっていることがわかる。
(2)寒天平板法によるタンパク質分解酵素の確認
《1》 準 備
○ヒヨコの各消化管 はさみ,ピンセット,スキムミ ルク,寒天末,円形ろ紙(パンチした直径6mmのも の),シャーレ(直径9cm),上皿天びん,メスシリン ダー,ビーカー,湯せん鍋,ガラス棒,駒込ピペッ ト,電気定温器,加熱器具,ノギス,注射筒(50ml用)
○ボーキニンB(Pヒドロキシ安息香酸5g,70%ア ルコール95ml),0.9%生理食塩水
《2》 方 法
(ア)寒天平板の作りかた
蒸留水100mlにスキムミルク2g,寒天末2gを加 え,湯せんで寒天がよく溶けたら,ボーキニンBを1ml 加えてよくかくはんして火を止め,予め乾熱滅菌し ておいたシャーレに,注射筒で10mlずつ流しこむ。
(イ)内容物を取り出した各 消化管やすい臓を,防腐剤 の入った生理食塩水(0.99% 生理食塩水1lにボーキニ ンB3mlの割合)でよく洗 い3〜4mm四方の大きさに 切りとり,図1のようにパ ンチした円形ろ紙,この 組織片を寒天平板上に置 き,シャーレにふたをする。
(ウ)38度に調整した電気定温器の中に静置し,20時間後観察する。 そして,無色透明部の直径を測定する。
《3》 結果と考察
写真1
20時間後
円形ろ紙をつけたままのもの 円形ろ紙をはがしたもの
写真1のように,す い臓をのせた部分に, 直径12mm以上の大きな 無色円が形成される。 そのほか前胃には5mm 位の不透明なぽんやり した無色円が認められ る。時には,砂のうで も7mm位の不透明な無 色円が認められることがある。この結果すい臓にはタン パク質分解酵素があるといえる。また前胃からも出てい るのではないか。
(3)寒天平板無色部のアミノ酸の確認
《1》 準 備
○ろ紙(東洋ろ紙No.51 5mm×50mm)スプレー,ニン ヒドリン液(95%エタノール100ml,ニンヒドリン 0.1g)電気定温乾燥器