福島県教育センター所報ふくしま No.35(S53/1978.2) -017/026page

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<研究実践校紹介>

人  間  形  成  の  教  育 

― 豊かなこころを育てるためには,どのようにすればよいか ―  

郡山市立行健中学校長   武  田  亨  

◇ はじめに  

 本校は,昭和49年4月,郡山市教育委員会より「人間 形成」をテーマとした研究推進校として指定を受け,以 来3年間にわたって研究実践をすすめて来た。  

 研究実践をすすめるにあたっては,本市教育委員会の基本構想や施策にそいながら研究主題を「豊かなこころを育てるためにはどのようにすればよいか」と設定し,研究の具体的展開をはかった。なお,研究実践の領域を研究主題の性質上各教科,道徳,特別活動の教育課程全領域にわたって行なうことにした。 

 研究1年目の昭和49年度は,研究主題の設定,研究計 画の策定等に多くの時間を費した。その過程で「人間形 成の教育」を,究極的には「豊かなこころ」を育てる教 育ととらえ,その内容を「感じるこころ」「求めるここ ろ」「考えるこころ」「生きていくこころ」の四つのこ ころに分析した。各教科,道徳,特別活動の各研究部会 ではこれらの「四つのこころ」をその教科,その領域の 本質に即して,どうとらえるべきか,また,生徒の実態 を分析して特に補なわなければならない「こころ」は何 かを時間をかけて話し合った。このような基本的な話し 合いの結果,生徒に即時に還元できる実質的な研究実践 をすすめることを原則として,各教科・各領域の独自の サブテーマが設定された。その研究計画の策定や実践研 究の切り込み方は各教科,各領域の特質によって差違が 生じるのは当然であるが,その方向はつねに研究主題の 「人間形成」という窓口に収れんされることが必要であ ることを強調した。 

 2年目の昭和50年,3年目の昭和51年度は具体的な実 践の年であり,まとめと研究発表の年であった。  

 本年度は,一応指定を終了し,その発展として,新しい構想で「生徒活動の時間」をテーマに研究に取り組んでいる。 

 一つの課題に取り組み,共通理解を基盤とした体制の確立に努力したことは,全職員相互の人間関係を好ましいものにしたばかりでなく,厳しさを持って事に当ろうとする意欲と士気の高まりを持つことができた。 

 しかも,このような学校の体制と全職員の姿勢は微妙 に生徒に対応して生徒活動における生徒の姿にも顕著な 変化がみられるようになった。

<行健中学校校舎>
<行健中学校校舎>

1.主題設定の趣旨  

(1)探究する心やねばり強さに欠ける中学生  

 今日の社会状況の変動にともなう価値観の多様化と思想的混迷は社会道徳の低下をきたし,自らを支え自ら信じる価値観を持つことなく情緒不安定な行動をもつ人間を生み落している。一方,中学生の多くは,一見,明朗ではあるが集団生活の中では自己中心的で,日常生活においても刹那的である。また,判断力,実行力,社会的使命感が乏しく,無気力,無関心,無責任の傾向がある。ゆえに,事象をじっくり探究したり,科学する心が欠け,ねばり強く考えぬいていく態度が欠けているのが,一般的な中学生の実態であり,問題点である。 

(2)豊かな人間性の育成が今日的課題  

 人間形成とは,「身体的・知的・情意的・倫理的な統合」をはかることが大切であり,「調和と統一ある豊かな人間性の育成」が,望ましい人間形成である。また,本校教育目標や地域社会からの学校教育に対する要請を総合すると,そこからは当然に,豊かな人間性の育成という願いが,浮きぼりにされる。 

 豊かな人間性の育成とは,具体的には, 

○学習したことが身についている。
○道徳的実践力が身 についている。
○豊かな情操が身についている。
○健康 で体力がある。

という生徒を育てることである。  

 しかも,これらの底流をなしている本質的なものは,人間尊重の精神であり,人間尊重の教育,なのである。 


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