福島県教育センター所報ふくしま No.37(S53/1978.8) -013/030page

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これらの要因のうち,人格的要因は,それだけでも学業不振・不適応の原因になりうるが,環境的要因のほと んどは,それが直接に不振や不適応を起こすというよりも,まず子どもたちの人格面に影畢を与えて,その結果 として間接的に学業不振・不適応をひき起こすと考えられる。また,これらの要因はいくつか同時に働いている ことが多い。そこで,ひとりひとりの子どもたちについてその原因をさぐり,指導方針をたてるには,観察・諸 検査・面接等から総合的な判断が必要になってくる。少ない資料で断定することは危険である。

3. 個人理解と学業不振・不適応の診断

学級担任が何が原因でこの子が学業不振・不適応を起こしているのかをとらえ,治療的指導や解消のための援助指導を行うためには,個人理解が何よりも大切といえる。個人理解には

1.主観的理解(第1印象,特徴的行動は握,等)
2.客観的理解(行動観察,心理検査,傾向調査等による資料分析,等)
3.共感的理解(受容的面接面談による記録資料の整理,等)が考えられる。

原因は握は,上記の三つの理解資料を総合・統―してはじめて成り立つものであって,安易に教師(学級担任)の主観的理解等による―方的な断定で,個人指導の方針をたてるべきではないといえる。特に小学校高学年から申学校,高等学校においては,心理的側面の客観的な原因追求がなければ,治療的指導や不振・不適応解消のための援助指導は難しくなろう。

そこで,学級担任が客観的に診断し,指導方針をたてるための心理的要因診断法について,出教育センターで実施している諸検査の中から,そのいくつかを紹介してみたい。

(1)不迫応心理的要因チェックりスト

これは,学業不振児の研究にとりくんでいる医博佐野良五郎氏の430の治療例からっくられた観察診断法で,簡単に子どもの行動特徴から,不振・不適応の原因傾向を見分けられるものである。

リスト中< F項目 >は,過保護・過干渉等に扱ったため,依頼心とわがままが生じ,年齢にふさわしい自立心の発達が末成熟で不振・不適応に陥っている子どもたちである。< G項目 >は,情緒不安傾向児で,親や教師が発達段階とか性格を無視したり,他と比較したりするあまり,失敗に対する不安と劣等感から不振・不適応を起こしている子どもである。< H項目 >は,学習習慣が正しく形成されてこなかった子どもたちのタイプである。そのために基礎学カが身につかず学業不振に陥る。これは,家庭における親の教育態度,学校における学習態度訓練に大きく原因している。

1.調査票(心因的要因)
(土印はどちらともいえない)

  項  目 判  定
F1 がまんすることがきらい。 はい ± いいえ
2 ぶつぶつひとり事をいう。 はい ± いいえ
3 自分の思い通りにさせてくれる人としか遊ばない はい ± いいえ
4 自分に都合の悪いことは,すぐ他人のせいにする。 はい ± いいえ
5 同年齢よりも年上か年下の友達と遊ぶのを好む。 はい ± いいえ
6 誰かそばにいないと、ひとりでは何もできない。 はい ± いいえ
7 自分の思い通りにならないとすぐ泣く。 はい ± いいえ
8 自分より何でも上手な友達をさける。 はい ± いいえ
9 気がすすまないと、しなければならないことでもやらない。 はい ± いいえ
10 依頼心が強い はい ± いいえ
  F得点合計   
G11 人の話を聞かない。 はい ± いいえ
12 用を言ったとき、うわの空でぼんやりしていることが多い。 はい ± いいえ
13 何事にも注意深く見ようとしない。 はい ± いいえ
14 何事にもとりかかりが遅く、いつまでもだらだらしている。 はい ± いいえ
15 人の好き嫌いがはげしい。 はい ± いいえ
16 人から注意されると、いつまでもその事にこだわる。 はい ± いいえ
17 何事にも自信がもてない。 はい ± いいえ
18 人の前に出ると固くなって思うように言葉がでない。 はい ± いいえ
19 友達の悪口を言ったり、けんかをふったりする。 はい ± いいえ
20 いつも他人のことが気になっていらいらすることが多い。 はい ± いいえ
  G得点合計   
H21 勉強するとき何をやったらいいか分からないことが多い。 はい ± いいえ
22 何事でもおぼえることが苦手である。 はい ± いいえ
23 ノートに書く文字や数字がひどくらんぼうである。 はい ± いいえ
24 教科書や本の読み方が、友達にくらべておそい。 はい ± いいえ
25 勉強以外のことに時間を多くとられる。 はい ± いいえ
26 復習も予習も毎日はやらない。 はい ± いいえ
27 何事でも準備なしにゆきあたりばったりにやる。 はい ± いいえ
28 生活のリズム(ねる、食事時間など)が日によって変わる。 はい ± いいえ
29 教科書を読むとき大切な所を考えながら読まない。 はい ± いいえ
30 勉強の時、いつも好きな学科だけを勉強する。 はい ± いいえ
  H得点合計   

2 結果の判断

分類 正常範囲 要 注 意 要治療
自立心未発達型(F) 4点未満 4点〜6点未満 6点以上
情緒障害型(G) 4点未満 4点〜6点未満 6点以上
学習習慣不確立型(H) 5点未満 5点〜7点未満 7点以上

※「はい」のみ1点として計算する。

(2) 性格・適応状態の検査

 

1. Y・G性格検査

これは,アメりカの心理学者ギルフォード氏らの考案による3種の検査法をモデルとして,矢田部達郎氏らがつくった日本の代表的な質間形式の性格検査である。抑うつ性・劣等感・神経質・協調性・活動性等12の性格特性の判断と,性格上の問題点は握や個人理解に役立つ検査である。

2. FAT(学方向上要因診断検査)

東京教育大学,松原達也氏他編によるもので,精神的健康度,身体的健康度,友人教師関係,学習意欲等8領


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