福島県教育センター所報ふくしま No.37(S53/1978.8) -014/030page

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域160項目からなる診断分析検査である。

3.田研式社会成熟度診断検査

田中教育研究所編。幼児,小学生の社会性発達の程度(仕事の能率,からだのこなし,ことば,集団への参加,自発性,自己統制,基本的生活習慣)を父母,教師の観察から診断するものである。

4.親子関係診断テスト

東京学芸大学,品川不二郎氏他編。子どもの性格形成に重大な影響を及ぼす家庭内の人間関係と親の養育態度(拒否・干渉・不安・厳格・期待・溺愛・盲従・矛盾・不―致)を診断できるようになっている。

※ なお,詳しい内容や検査法などについては,教育相談部に質問・相談いただきたい。

4.援助指導とカウンセリングの態度

さて,学級担任が学業不振・不適応児を発見した場合,どのような方向から治療のための援助指導をしていったらよいのだろうか。三つの方向から考えてみたい。

1.個人に対するカウンセリングからのアプロ―チ
カウンセリングの態度としては,指示的(臨床的)カウンセリング,非指示的(理解的)カウンセりング,折衷的カウンセリングが考えられる。

「指示的カウンセリング」は,資料を収集し,原因の診断をし,指導の方針をたて治療し善導する方法である。利点は,個人理解が科学的になされ,問題の因果関係が明らかになり,指導も的を得たものになる。
しかし,反面資料から―方的に診断をし,教示的・訓示的態度に結びつく危険性もある。

「非指示的カウンセリング」は,問題を持つ子どもの良き理解者となり,いっしょに悩み考え,自ら変わっていくための援助の態度である。これは,子どもが自分から洞察し,自分で決定し行動していくのが本当の解決であるという考え方に立つので,長い期間の援助指導が必要である。

そこで,学校教育現揚においての態度としては,両者の折衷的な態度が妥当と考えられる。

「折衷的カウンセリング」においても,その基本は共感的理解にもとづく受容的態度である。よく生徒指導の理念として,この「共感的理解と受容的態度」について,こともなく言葉にするが,教師と児童・生徒の関係においては大変なことである。ラポート(信頼関係にもとづく意志の疎通関係)のないところにこの言葉は成り立たなりからである。安易に使うこの言葉の意味を,教師としての日常指導面で再検討・再確認したいものと思う。

2.学習指導面からのアプロ―チ

子どもがなぜ勉強が好きになれないのかを学習指導面からも考えてみたい。学習の雰囲気からくる不安感が強かったらどうだろう。幼児・小学生の場面かん黙などはこれが多い。また,学習がおもしろくなく,わからないままの学習をつづけたらどうだろう。興味を失い動機づけをなくし成績が落ちることは必定である。―方的・指示的,抑圧的な教授法が,子どもの有効な学習に必要な能動性や自発性を妨げることは,多くの研究データからも明白なのである。

3.学級経営面からのアプロ―チ

動機づけと子どもの適応性を高めることに十分なくふうと,計画的で意図的な学級経営がなされているなら,その学級はそのまま学業不振・不適応児の治療学級になる。その意味でグルーピングや集団指導等は効果がある。集団指導の中で,ひとりひとりの不適応感をなくし社会性や積極性といった性格の諸特性を伸ばしていく配慮は,個々の学習適応の改善を図り,能方を伸ばすための指導としては,きわめて大切なものである。

5.まとめに

学業不振,不適応と性格とは密接に関係している。そしてその性格は長い間に培われたものである。だから指導は,まったくのケースバイケースで立ち直りも遅い。従って現在,不振,不適応状態にある子どもの診断・治療指導はもちろん必要であるが,学級担任としては,もっともっとその予防指導に力を入れるべきではないだろうか。学業不振・不適応児をつくらない学習指導と学級経営に特に注目していきたい。そして,学級担任はいつも相談的教師でありたいものである。「教育は人なり」の至言はここにも生きている。

※ 相談的教師

1.子どもの心や感情を大切にする教師
2.行動の背景と心情に共感できる教師
3.子どもの心を開くことのできる教師
4.ひとりひとりの独自性を大切にする教師
5.扱いにくい子どもを排除しない教師
6.子どもの可能性を信じ,伸ばす教師
7.子どもに生きがいを与える教師


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