福島県教育センター所報ふくしま No.37(S53/1978.8) -018/030page
研究報告 昭和52年度 教育研究法講座
漢字を効果的に習得させる指導
会津若松市立神指小学校 西沢 義弘
1.研究の趣旨
(1)研究の動機とねらい
国語科の学習指導で漢字は大事にされ,必ずとり上げられて指導されてきている。本校においても,漢字の習得を図るために学習指導計画の初めとか,終わりの段階に位置づけて効果を上げるように努力しているが,漢字を書くカは身についていない。そこで,学級の子どもの学カの実態をとらえるために学カ診断検査を実施した。
その結果は次の通りである。
<表1> 教研式小学校観点別学力診断検査結果
領 域 聞く・話す 読 む 作 文 書 写 正答率 61.5 60.2 67.0 57.5 他の領域に比べて,書写の領域が劣っていることがわかる。漢字を習得させるために各学年においても筆順,字形,字画,意味,読み方,書き方,使い方などの指導が行われているし,子どもも勢力している。しかし,効果は上がらず習得状況はよくなっていない。このことほ漢字数の多くなる高学年になるにしたがってその傾向は強い。
このような実態から,漢字を確実に習得し,使用できるようにさせたいと考えこの研究を始めたわけである。
(2)問題点
書写の領域について,さらに分析してみると次の通りである。
<表2> 書写の領域における正答率
かなづかい 送りがな 誤字→正しい漢字 かな→漢字 66.3 68.3 48.3 48.1 この表から,書写の領域でも特に「誤字→正しい漢字」「かな→漢字」の2つの側面が劣ることがわかる。つまり,漢字を書くのがよくないのである。これが書写領域の平均を低くしているわけである。
さらに,漢字を正しく書けない原因をみると,次のことが漢字の指導における問題点として上げられる。
1. 形の似た漢字を書きわけるカが足りない。
2.同音,同訓の字の書き分けができない。
3.漢字の持つ意義や用法,構成について理解ができていない。子どもの漢字の書き誤りの例は,次の表の通りである。
<表3> 誤答例
漢 字 誤 答 負ぼう→貧ぼう 票 本→標 本 表 規 節→季 節 秀,期,委 底 い→低 い ,柱,複 住 復→往 復 反 省 反 成 努 力 成 績 成 責,成 積,成 賛 向 上 工 場,効 上,高 上 資 料 資 科,貿 料 整 理 生 理,正 理 健 康 建 康 習 慣 週 慣,週 間,周 間 (3)原 因
このような結果が生じた原因として,次のことが考えられる。
1.漢字の指導は1年生から行われているが,学年が進むにつれて機械的な反復練習にかたより,覚えさせる時点での「覚える」「使える」ようにするためのくふうが足りなかった。
2.漢字の形や意味を考えさせ,理解させる指導が十分でなかった。
3.書くことについての抵抗が大きく,漢字テストで・は少しのことでまちがいにされ易く,子どもは漢字の学習に興味が持てなかった。このような反省から子どもが意欲を持ち,積極的に習得できるようにしたいと考えた。