福島県教育センター所報ふくしま No.38(S53/1978.10) -004/030page
思考を促し学習を展開するのに発問は重要な役割をしめる。発問は突発的なものではなく計画的なものでありたい。教材分析の結果に基づき,その核心にアプロ―チする過程を明確にしておかねばならない。そこに発問構造がある。つまり中心となる発問,それを支えている発問があり,その発問のつながりをおさえておく必要がある。せめて中心となる発問(主発問)ぐらいは吟味しおさえておきたいものである。
次に学習形態,学習方法を決定したい。―般に社会科の授業は,教師の―方的な講義や問答学習または発表学習等に偏ることが多い。多くの学習形態,学習方法の特性をは握し,―つのものにこだわることなく教材に即応したものを採用したい。特に新学習指導要領の強調する作業的な学習などを多くとり入れたいものである。
資料は,教材のは握のもとに精選される。この資料を指導過程に位置づける際,次の点に留意したい。
○資料の使用目的(○学習への興味関心をもたせ学習 意欲を高める・問題の発見やは握をさせる・知識や情報を得させる・学習の糸口,関係的手がかりをつかませる・概念,原理,法則などをつかませる・経験を拡大させる・問題を整理し,学習を軌道にのせるなど)をはっきりさせるとともに,低学年ほど使用目的が単純であること。
○資料の内容・表現とも児童の能力に応じたものてあ ること。
○資料の収集は広く,選択は厳しくし過剰にならないようにすること。
○資料の提示時期,方法について工夫すること。
○いわゆる情報処理能カを育成するという資料学習の目的をも達成するようにすること。
教育機器の導入をはかり,授業の効率化をはかることが大切である。機器には,視聴覚的提示機能を持つもの(スライド,磁気録音機,映画,VTR,OHPなど)反応処理,評価機能を持つもの(アナライザー)制御機能を持つもの(情報提示反応分析操作制御)があるが,それぞれの特性をとらえて活用することは勿論であるが機器の使用が過剰にならないように計画しなければならない。講座では,この演習の後に実習「TPの製作と活用」を計画したので,指導過程の中にOHPを活用する箇所を組んだ。
次の表は,昭和53年度小学校社会講座に参加された先生方77名を対象とした「教育機器活用調査」の結果である。
教育機器 OHP スライド 録音機 VTR テレビ 8ミリ映写機 16ミリ映写機 活用割合(%) 95 81 65 21 88 21 31 授業にどんな教育機器を活用しているか,その割合を調べたものであるが,0HPの普及は目ざましく,ほとんどの学校で活用されている。OHPの教育的特性から考えても,今後ますます工夫され活用されるものと思われる。教材基準の改定によるOHPの基準台数も大幅に増加されたのでこの傾向は従前よりいっそう進むものと思われる。社会科においては,合成分解法などTPの研究をすすめるべきである。 (所報第33号参照)
最後に評価の位置づけをしなければならない。目標がある限り,その目標の達成度について評価しなければならない。評価には総括的評価と形成的評価がある。従来総括的評価にカ点がおかれる傾向にあったが,全児童の学習の成立を目指し形成約評価の研究につとめなければならない。そのためには,目標を具体化し,目標と指導過程との関連を十分におさえ,評価を指導過程に位置づける工夫をする必要がある。その際,下位目標行動の設定などは役立つものと考える。位置づけと同時に評価の方法を計画しておきたい。
その他板書計画等については紙数の都合で省略したい。
(5) 学習指導案として整理
小単元目標の確認,指導計画の作成,本時目標の確認指導過程の構想について述べてきたが,これらを―定の様式にしたがって学習指導案として整理する。(様式省略)
4 教材研究の評価
所報第27号で述べたように教材研究は,計画→実践→評価→計画のサイクル的,スパイラルな考えに立って行われるべきである。つまり学習指導案として整理された時点で教材研究が終ったわけではなく,この段階は教材研究の実践段階でしかないということである。授業の実践,授業の反省(授業分析等を基にした考察等),教材研究の評価,改善の構想の評価段階があるということである。講座では,これらについては実践できなかったが,この評価の累積があってはじめて教材研究が効果的なものとなり,教師自身の実カが倍増するのである。
5 おわりに
所報第27号,第33号そしてこの号と3回にわたって,小学校社会講座で実践していることを紹介したが紙数の都合で具体的な事例について十分に述べることができず,また言葉足らずに意をつくせない点があったことをおわびしたい。講座では,多忙であったが演習を通して研究を深めることができ,センター以外ではできぬ研修であったと喜ばれ,グループ編成による活動は,べテラン教師との意見の交流が十分になされたと好評であった。
教材研究の時間の確保のむずかしい現在ではあるが,教材研究は,教師と児童のためにあることを自覚し,精進したいものである。