福島県教育センター所報ふくしま No.38(S53/1978.10) -007/030page
(展)は展開上の,(技)は技法上の,(評)は評価上の配慮事項を示している。
(第2次)
砂糖以外のものも水に溶けるのだろうか
砂糖は水に入れると形が無くなり,水が甘くなった。それ以外のものを水中に入れたらどうなるか。○(砂糖以外のものを水に入れてみる)
・溶解観察用の棚にあめ玉を載せてどうなるか見る。
・途中であめ玉をとり出してみる。
・あめ玉はどのようになっていったか。
・水はどのようになっていったか。
○(それ以外のものを同じように水に入れてみよう)
・演示実験:過マンガン酸カリウムを棚を使って溶かして見せる)
○(ものが溶けるというのはどういうことか)
・いままでの観察をまとめでみよう。
(第3次)
せっけんを水に溶かしてみよう ○(せっけんについての話合い)
・どんなとき使ったことがあるか。
・せっけんは水に溶けるのか。
○(せっけんを水に入れて観察する)
・途中せっけんを水から出してさわってみる。
・せっけんの形の変化とあめ玉の形の変化の違いを調べる。
・せっけんの溶けた水,砂糖(あめ玉)の溶けた水,過マンガン酸カりウムの溶けた水などの違いをくらべてみる。(せっけんは溶けたのだろうか)
ということから砂糖は水の中に入ったことを理解させる。(溶質の変化)
水は透明だが甘くなったので水の質が変化したことに気付かせる。(展)あめ玉を示し,食べたことがあることなどを意識させる。砂糖と違って着色していることに気付かせる。
(技)光の来る方向にビーカーを置いて,ビーカーの側面から観察させる。
溶けたものが底の方へ下っていくのが筋状になって見える。そしてあめ玉の色が水全体に広がっていくのを観察させる。また,あめ玉は溶けるのが早いので形の変化に気付かせる。
これらのことから固体が形を変えて水の中に入っていくことを理解させ,砂糖の場合と同じであることに気付かせる。(展)児童がほとんど知らない別の固体を水に入れて様子を観察させる。
(評)溶質の変化に気付いたか。
物が目に見えない小さいものになって水の中に入ってしまったことが理解できていたか。
溶媒の変化に気付いたか。(展)『日常せっけんはどんなところに用いているのか,確認する。
そして使うとどのようになっていくのか思い出させる。(技)棚の上にせっけんを載せて水に入れてみる。
(評)溶質の変化の違いに気付いたか。
やわらかくなることや,小さいかたまりが落ちることなど。
溶媒の違いに気付いたか。
白く濁って不透明になってくる。(展)「せっけんのような溶けかた」という表現を使っていく。
演示実験として例示した過マンガン酸カリウムの溶解は着色が非常に鮮かで,溶解速度,拡散速度が割合大きいので良い素材であると思う。殊に溶解の途中の変化は美しく児童は感嘆の声をあげることだろう。なお,過マンガン酸カリウムは劇薬なので取り扱げを注意しなければならない。
以上の3時間の展開で指導要領の前半の指導を行い,次に,物を速く溶かすにはどうするかというテーマに進んでいく。このときも,粒の大小や溶媒の温度の違いによる溶解速度の比較に,氷砂糖,ザラメ糖を用いて展開していくことができる。
おわりに
物質が小さくこわれて溶媒の中にちらぱってしまい,そのままでは溶媒とわかれなくなったものは,溶質,溶媒が単独でもっていた性質と異なった新しい性質を示すようになる。このものが溶液である。このことからみればせっけん水も砂糖水も溶液であり,せっけんも水に溶けたのである。しかし,これらを同じ水溶液として取りあげるには性質上の違いがあるので区別してとり扱ってみた。低学年での水溶液の学習では,「溶ける」という概念形成が中心になるので導入段階で注意して取り扱っていきたい。