福島県教育センター所報ふくしま No.38(S53/1978.10) -008/030page

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中学校教材

寄せ物学習における寒天の調理性に関する指導

寒天ゾルの凝固とゲルの物性を中心として

科学技術教育部  佐藤 清子

1.はじめに

調理は食品の性質を理解して,それにさからわないようにしないとよい結果はえられないものである。

したがって,今回の学習指導要領の改訂においても食物1,食物2,食物3を通して,「食品の性質とその選定」の項目では,科学的な根拠をおさえて,調理の操作ができるよう指導するようになっている。

科学的根拠を追求するための調理実験を行う場合は実習と緊密な関連をさせ,その目的や方法を考慮し慎重にするようにしたい。

食物2でとりあげる寒天を用いた寄せ物としては,果汁かん,牛乳かん,あわ雪かん,フルーツ寄せなどがあり,生徒の嗜好を考慮して題材をとりあげるが,その際,寒天の調理上の性質を知って調理できるように指導する。このねらいは,調理手法とともに調理中に起こる食品の物理的,化学的な変化に目をむけさせ科学的な調理ができるように,また,転移,応用の能力を養うところにある。

寄せ物学習の目標の明確化をはかり,目標行動を設定し調理技術をささえる条件として関連のある寒天の調理性をあげ,それに関する実験を行い,指導資料としたい。

2.寄せ物学習の目標行動の設定

[最終目標行動]

寒天を用いた寄せ物の調理計画をたて,作り方の要点に従ってくふうし,能率よく作ることができる。

[第―次下位目標行動]

(1)寒天を用いた寄せ物の特性及ぴこれを作るに必要な材料と分量,食品の調理上の性質や調理法の要点がいえる。
(2)寄せ物の調理計画にもとづき,作り方の要点に従ってくふうし,能率よく作ることができ,目的に応じた調理ができたか確認できる。

[第二次下位目標行動]

 (寒天の調理性に関連するもののみ記載)
 (1)寒天の種類による膨潤の時間がいえる。
 (2)寒天の溶解温度および凝固温度がいえる。
 (3)目的に応じた寒天波の濃度や砂糖の量がいえる。
 (4)酸味の強い果汁などと煮るとゼり―強度が弱まることがわかり,適切な扱い方ができる。
 (5)卵白,あん,果物など比重の異なるものを寄せる場合,分離させないように作る方法がわかる。

上記の寒天の調理性を理解させるための理論の裏づけとして,次の実験を試みた。

3.寒天の調理性に関する実験

実験1.  ゼり―強度に及ぼす砂糖の影響

 目的 寒天は,水に浸すと膨潤し,水を加えて加熱すると溶解し,冷やすと固まる性質があることを知らせる。
  ゼリー強度は砂糖の温度によって異なることを知らせる。

 用具 一般調理器具(なべは直径l2cm,60Occ位のもので重量を測っておく。
  ゼリー型 12個,カードメーター

 材料 寒天(今回は粉末寒天),砂糖

 方法

(1)寒天1.5g(1%)をなべに入れ,水200ccを加えて10分おく。これを火にかけ,沸騰したら煮立ちがとまらない位に火を弱め,150gになるまで煮つめる。これを―定のゼり―型3個に50ccずつ入れ室温て20分放置する。(対照)

(2)寒天1.6g(1%)をなべに入れ,水140ccを加えて10分おく。これを火にかけ,沸騰したら火を弱め,砂糖24g(15%)を90ccの水で溶かしながらなべに入れ,加熱を続けて160gになったら(1)と同様3個に5Occずつ入れて同―条件で凝固させる。

(3)寒天1.7g(1%)に水120ccを加えて(2)と同様


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