福島県教育センター所報ふくしま No.38(S53/1978.10) -010/030page
あわ雪かんの場合は,写真2のように温度が高いほど比重の軽い卵白が浮き上って分離するが,40℃では寒天液の凝固がはじまり粘性をまして卵白と均―に凝固している。分離させずになめらかに流せる適温は40°Cである。
実験3. ゼり―強度に及ぼす有機酸の影響
目的 寒天ゼリーは,寒天の濃度,凝固温度,添加物などによって大きな影響をうける。寒天濃度を異にする果汁かんおよび果汁を加える時を異にする果汁かんを調整し,味覚,硬度測定などにより,寒天の性質と扱い方について理解する。
用具 ―般調理器具,ビーカー(200cc)5個, 万能PH試験紙,カードメーター
材料 粉末寒天4g,砂糖100g,オレンジジュース(果汁100%)
(1)分量の寒天を分量の水に10分浸漬後,加熱溶解し,寒天が溶けたら砂糖を加え,2(丸囲み)4(丸囲み)5(丸囲み)の加熱後の全量になるまで煮つめる。
(2)2(丸囲み)の300gをl00gずつビーカーに分け,1(丸囲み)2(丸囲み)3(丸囲み)とする。
(3)1(丸囲み)の寒天液l00gはそのまま冷却凝固させる。
(4)2(丸囲み)は果汁3Occ加えて加熱し,l00gになったら冷却凝固させる。
(5)3(丸囲み)は加熱して70gまで煮つめ,60℃に冷まし,果汁30ccを加え冷却凝固させる。
(6)4(丸囲み)5(丸囲み)は60℃に冷まし果汁30ccを加え冷却凝固させる。
(使用したオレンジジュースのpHは4であつた。 なお,試みにレモン汁で上記と同じ実験をしたが,レモン汁のpHは2であった。)
結果とまとめ
図2の1(丸囲み)〜2(丸囲み)に見られるように,有機酸は寒天の凝固力を弱める。特に2(丸囲み)のように果汁を加えて加熱すると写真3の右のように形が保てなくなる。2(丸囲み)をレモン汁で行ったものは液状をなしていた。有機酸が寒天の成分であるガラクタンを分解し凝固力を弱めるためである。果汁かんを作る場合は,目的の分量まで寒天液を煮つめ,60℃にさましてから果汁を加えるようにしたい。
4.おわりに
以上の実験はそのまま授業でさせるものではなく,先生方が寒天の調理を指導する際に,示範や写真,スライドなどにして,科学的な根拠を理解させる資料としてほしいものである。
寒天の分離の実物または写真を見せて「それはなぜか」と追求する態度や調理中に起こる物理的,化学的変化に目をむける習慣をうえつけさせたい。さらに生徒が他の食品を用いて寄せ物を作るときにはどうしたらよいかと考えが発展するようならすばらしいと思う。応用性や転移性にとんだ調理指導をめざして,その習得の過程で科学的な追求を重視したいものである。
魅力ある教材の扱い方をし,学校で実習したものを創造的に生活に生かし,明るく豊かな家庭生活を常に心がけるような生徒に育てたいものである。
参考文献
中学校技術・家庭科研究の手びき 文部省
調理実験 松元・吉松共著