福島県教育センター所報ふくしま No.38(S53/1978.10) -011/030page
教育相談
登校拒否児をつくらないために
学級担任の役目
教育相談部 国井 高雄
1.登枚拒否の現状から
当センターで扱った登校拒否の子どもたちの数は,<表I>の通りである。年々増加の―途をたどっていることがわかる。また,1年間の月別の件数をみると,学期の前半に多い煩向にある。<表2>
このことは,年度変わり目の学級担任の変更,入学時の新しい社会への仲間入り,学期初めの組織編成,長期休業による規律正しい生活への耐性の欠如等からくる精神的緊張・不安のつみ重なりが影響しているのではなかろうかと推察される。
<表1> 「登校拒否による来談者実人数」
(53年度は7月末現在)
児童・生徒\年度 47 48 49 50 51 52 53 小 学 生 2 2 4 8 14 7 6 中 学 生 1 4 6 8 18 26 9 高 校 生 0 3 9 7 12 21 6 計 3 9 19 23 44 54 21 <表>2 「月別・登校拒否来談者実人数」
年度 \ 月 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 昭和 51 年度 4 4 7 2 1 4 5 1 1 8 4 3 昭和 52 年度 12 7 6 4 0 9 7 4 1 1 2 1 昭和 53 年度 7 7 5 2 1 そこで,子どもたちが,登校拒否を起こさないで,楽しく生き生きと学校生活を送ることができるようにする
ために,学級担任の役目はどうあればよいのかを追求してみたい。2.登校拒否はなぜ問題になるのか
登校拒否は,放っておいても治るものなのだろうか,また,その子の人間形成に悪影響を及ぼさないものなのだろうか。この点はかなり問題のあるところである。全国の各教育相談機関で治療指導にあたった実践結果からみると,次のような問題点があげられ,予防指導の大切さが指摘されている。
(1) 登校拒否は,放っておけば長期化する。
(2) 登校拒否は,子どものパーソナリティに起因した問題である。
(3) 登校拒否は,小・中・高の学校教育の間だけの問題ではなく,適切な教育的または治療的な対応がなされないと,おとなになってからも,いろいろと障害を残す。
(4) 登校拒否をすると,その約70%は再発するか,繰返しをし,回復が容易でない。
(5) 分裂病・うつ病など,精神病のあらわれの1つであると受けとられてしまいやすい。
登校拒否をつくらないために
登校拒否の原因をさぐると,(1)「母子の分離不安説」(低学年に多い),(2)「自己万能感脅威説」 (自分を―段と高いところにおくところから起こり,中学生に多い。優等生の息切れ型ともいう。),(3) 「場面逃避説」 (人前で話したり,発表したりする不安からの逃避,人前で失敗場面をつくらない。) (4) 「抑うつ説」(情緒面では沈んでいないが,抑うつが表面にでて,やる気をなくす。),といろいろある。いずれにしても,家庭の親子関係,本人の性格が,かなり影響してくる。
これらの原因をつくらないようにするためには,子ども自身が,自分の良さを知り,自分の「可能性」を信じて,能動的な行為ができるようにすることが大切になってくる。
そこで,学級担任の役目を,まず「子どもとの触れ合い」面から,次に「学級経営」の面から,三番目に「家庭との連携」面から考えてみたい。
(1) 子どもと触れ合う機会を多くする。
1.朝の―声を忘れずに。
「お早う。」,「今日も元気だね」 などと,子どもに―声かけることは,子どもに親和感を感じさせ,―日の生活のスターートに意欲を喚起するものである。朝のちょっとしたあいさつや話しかけをきっかけにして,子どもに精神的な安定を得させ,心を開かせていく素地となるのである。2.「いい子」や目立たない子との接触を大切に。
登校拒否のきっかけは,学年を問わず,ほんのさ