福島県教育センター所報ふくしま No.38(S53/1978.10) -013/030page
んでいることへの不安がつのっていく時期でもある。それだけに,学期初めの子どもの表情,動き,心を短期間のうちに的確につかむことが大切になってくる。1日でも早く,子どもたちが,お互いに何でも話し合える学級のふんい気やよりよい人間関係の和をとりもどすことに努力をはらいたいものである。
3.ひとりひとりが特色をもった存在に。
十人十色と言われるように,ひとりひとりの個性はみなちがう。子どもにはそれぞれ,その子でなければできないような「何か」をもっているものである。担任は,その「何か」に敏感に反応し,それを掘りおこし,その「何か」を,素直に,のびのびと育てていかねばならないのではないか。例えば「漢字の書きとり なら誰れにも負けない,「スピード計算」なら誰れにも負けない,「電気の扱い方」にかけては誰れにも負けない,というように,「その子に1つの分野で他の子よりすぐれているものをつくりだしてやることが大切である。
1つの分野に深くとりくめるようになると,その分野の理解がますます深まっていく。このことが達成できると,自信がつき,他の分野にも意欲を示し理解も容易になり,自然と知識も広まっていく。
要するに,「やる→できる→認められる→自信がつく→さらに深く研究→成就感→生きがい」と良い方向に伸ばしていくことが必要である。
4.ひとりひとりに貢献感を。
5年のある学級に補欠でいった教頭先生が「この学級は黒板の手入れがゆきとどいていますね。勉強するみなさんも書かれた字がすっきりと見えていいですね。」と言われた。黒板ふき係のA君は,班日誌に「自分の黒板ふきの仕事がみんなに役立っていることがわかり,うれしかった。」と書いていた。
人間は自分が他の人に役立っていると感じるとき,生きがいをおぽえる。この生きがい、を失ったとき,無気カ状態におちいったり,自暴自棄になったり,マイナスの行動に走っていく。従って,学級にあっては,「―人1役をつらぬき,この係活動を通して,そのどんな小さな努力やくふうをも見のがさないで,それが学級全体のこの面に役に立っているのだ」という喜びを体験させることが次の活動への原動カとなるのである。
(3)常に,家庭との連絡を密にする。
1.欠席・遅刻,早退は必ず家庭と連絡を。
朝,教室へ行ったとき,全員そろっていれば―安心である。登校拒否の子どもは,1週間の中でも,月曜日が―番不安定である。怠学の子どもは金・土に欠席が目立つ。従って,朝登校したとき,欠席や遅刻の子には,その理由を明確にして対処していくべきである。必ず,電話か何かで確認することが必要である。早退の子の場合も同じである。
なお,登校拒否の子どもは,朝,頭痛や腹痛を訴える。その痛みは,登校時刻をすぎると治る。この点にも留意して,対処していくべきであろう。
2・両親に「親の態度と子どもの姿」の理解を。
登校拒否の発症した子どもの家庭をみると,両親の養育過程にゆがみがみられることが多い。1つは過保護・溺愛の場合,2つは過干渉・期待過剰の場 合である。このような養育態度でのぞむと,どのような子に育ちやすいかをまとめてみると<表5>のようになる。
<表5>
過保護・溺愛 過干渉・期待過剰 子どもの姿 ・親がいないと不安になることが多い
・内弁慶でわがまま
・耐性に乏ましい
・きびしい場面を克服する気力に欠ける
・集団生活への不安や緊張感が強く,逃避する
・小学時代に発症することが多い・たえず親の期待を気にして行動する
・社会性・自主性が育てられていない
・自「決定の場面を逃避する
・冒険の場面を逃避する
・いい子としての見せかけの態度をとる
・思春期に発症することが多い
以上のことから,親の養育態度いかんによっては子どもは,よくも悪くもなる。だから,どうしても親の協カが必要になってくる。従って,担任教師は<表5>に示された関係をよく理解し,P.T.A.学校だよりなどを通して,具体例をもとに解説し,両親に理解していただくことが大切である。親の態度が変革すれば子どもも変革していくものである。
また,子どもには,適度に不自由を経験きせ,辛さに耐えたり,不自由の中でくふうしたりすることを親と協カして,つみ重ねていくことが必要である。
3.父親は「もっと父親らしく」
当センターに来ている事例をみると,登校拒否の子どもの父親のほとんどは,「まじめ,おとなしい,やさしい」感じのタイプに見られる。こういう父親は,子どものしつけに,きびしさが見られず,母親的な態度が多い。もう―方の父親像は,社会的にも,性格的にも安定しているが,家庭を離脱し,圧力的な父である。いずれにしても,父親としての役割を果たしていないのが共通している事がらである。
父親は,もっと「人格的権威」を確立し,いざというときに「頼りになる父親」になることが大切である。―方母親はもっと母親らしくすること。担任は親との相談で,またP.T.A.等の活動を通して,このことをじっくりと話し合っていくべきではなかろうか。