福島県教育センター所報ふくしま No.38(S53/1978.10) -020/030page

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<研究実践校紹介>

ひとりひとりを伸ばす指導過程の研究

教育機器の活用をとおして(算数)

白河市立五箇小学校長  鶴巻 厚

1 はじめに

1.地域の実態

本校は白河市の東部に位置し(旧五箇村,昭和30年に白河市と合併)米づくり・を中心とした農村地域にあ る。学校をとりまく環境はきわめてよく,父母の教育に対する関心度も高くPTA活動なども活発である。兼業農家が年々多くなり,中小工場の進出に伴って共働きをする家庭もふえる傾向にあり経済的には裕福な家庭が多い。

2.児童の実態

情報化社会の中で,テレビなどの視聴をとおしてうける影響は大きく,地域の児童の姿もかなり変容してきている。しかし,学校をとりまく環境のよさと,父母の教育に対する高い熱意とにささえられて子どもたちは,確かな成長をみせてくれている。

明るく健康的であり,たくましく,よく協カする子どもの姿が生活を通じてみうけられる。また,本校では,情操教育の充実のためのひとつの柱として"豊かな,心情を育てる環境づくり"をとりあげている。

学級の花だんはもちろんのこと,四季を通じて花をかかさないし児童は―人2鉢(菊,コリウス)の栽培をとおして,やさしく思いやりのある心,助けあういたわる心などが育てられ,人間形成上きわめてよい実績をあげている。

この花づくりは,本校の特質でもあるが,今では地域ぐるみの"花いっぱい運動"までひろげられ,毎年,秋には,子どもと,老人,父母の丹精こめた菊の展覧会まで開かれるようになってきている。

3.学校の実態

児童数154名,教職員数8名,―学年―クラスの小規模校であり,児童数は今なお減少しつつある。

職員数が少ないからこそ,何事においても―致協カしてやれる体制ができていることは心強い。

本校は創立103年の伝統をほこりとし,地域の熱意にささえられて,文部省指定道徳教育研究校(昭和38年)や視聴覚教育研究校(昭和43年)をはじめ教育実践研究会を継続して開催してきている。また最近においても,松下視聴覚教育研究財団助成校(昭和51年度),県指定をうけ家庭科研究会(昭和52年)を開催したり,自校の研究集録"あしあと"も第7集までまとめることができた。

「花いっぱい運動」

「花いっぱい運動」も進めている

2 研究主題設定の趣旨

「ひとりひとりを伸ばす指導過程」とは,別ないい方をするならば,人間というものはなんらかの意味で個人差の著しいものであり,いわば個性的存在であるから,その個性を尊重し,その個性に即応した指導をし,その個性の伸長をはかるような指導過程ということができるであろう。

―人―人を伸ばすとか,育てるということは一人一人の個性的な思考,個性的な生き方を重視する考え方である。そのためには,教師が子どもの―人―人をよくみつめるということが大切になる。子どもに対しての既成の評価や先入観をなくして,子どもの立場に立ってよく観察するという教師の姿勢がまず問われることになる。

1.ひとりひとりを伸ばすということ

わたしたちは,今,―人―人の子どもを伸ばずために,子ども理解に基づく個別化指導を行わなければならないという考えに立っている。そのために,わたしたちは子どもたちの実態調査とその結果を生かした指導を研究の柱としたのである。そして,これらの子どもの理解や子どもの主体的な活動促進のために,教育機器を学習指導に導入する基本的な意味をもとめた。つまり,個別化の配慮のないところに,機器による個別指導はあり得ない。機器による指導ではなく,機器によってひとりひとりをとらえたあとの指導を考えているのである。

2.教育機器の活用を通してということ

教育機器の位置づけはもちろん目的ではなく手段である。つまり教育機器を使用して―人―人を伸ばすということではなく,提示機能としての使用なら「―人―人によくわかるようこ提示しているか。」また,診断機能としての使用なら,「―人―人の学習状態がよくとらえられるよ引こ使われていたかd ということを問題にしていきたいのである。

3.ひとりひとりをどうとらえるか

教師の発問に対する子どもの挙手,それにともなう


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