福島県教育センター所報ふくしま No.38(S53/1978.10) -025/030page

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わたしのアイディア

ファックス原紙利用の電流回路実験器

福島市立渡利中学校  大室 幹男

1.はじめに

中2理科「電流」単元の"オームの法則"の指導において,電流回路の概念が十分でないため,電流計等の破損が多いことと,理科学習指導における「個別化と作業化」をはかるための探究実験方法には問題点が多い。

そこで,電池1個を電源とし測定抵抗体にファックス原紙を利用した実験器具を自作してみた。

2.つくりの概要

(1)測定抵抗体として,1種のカーボン紙であるファックス原紙を用い,次のような利点を活用する。

(a)抵抗値が大きい→電流が小さく,安全である。
(b)紙バサミで任意の形に切れる。→抵抗値は大きさに比例するので,抵抗値の大小,抵抗の直列・並列の並べ方などを自由につくれる。
(c)抵抗体の途中の配線はいらないし抵抗体各部の電流・電圧を連続的に簡単に測定できる。

(2)1電源は単1乾電池1個を用い,可変抵抗を用いて,電圧を任意に変える。測定はマイクロアンぺア計を用いて,電流・電圧を測定する。

3.実験装置

(1)下の図lのように配線し,セット化する。

図1 測定回路図
図1  測定回路図

(2)ファックス原紙は紙クリップを用いて止める。

(3)電流測定接点は木片を用いて,測定間隔を一定にする。(図2)

図2 電流測定接点
図2 電流測定接点

(4)電圧測定接点は,みのむしクリップを用い,任意の間隔を測定できるようにする。

(5)電流電圧は1KΩ,S付可変抵抗を用い,任意の電圧を得られるようにする。

(6)電圧測定は,直列に20KΩの抵抗を入れて,電流計の電圧化をはかる。

(7)ファックス原紙は,うらに1cm方眼の目盛を印刷しておき,生徒が切りやすくしておく。

4.使用法 (抵抗の電流・電圧)

(1)学習課題を把握し,仮説と予想をたてる。

(2)実験用具の簡単なつくりと使用法を聞く。(写真1)

写真1
写真1

(3)原紙を班毎に自分達の考えに従って切る。(図3)
図3 ファツクス原紙の切り方の例
図3  ファツクス原紙の切り方の例

(4)電流測定接点で電流を3〜4cm毎に測定する。→幅がせまいと大きい電流になることを発見。

(5)水道管と水の流れに対比させ,「幅x電流」の値は―定であることを発見し,横の部分全体としての全電 流は,どこでも同じであることを知る。(表1)

表1 ファックス原紙の幅と流れる電流測定例
原紙幅 測定電流 全電流
4.0 cm 8 μA 32 μA
3.0 11 33
2.0 16 32
1.0 32 32

(6)電圧測定接点で電圧を3〜4cm毎に測定し幅が広いと電圧は小さいことと,各店間の電圧の和は,始めの電圧に等しくなることを発見する。

5.指導上の留意点

(1)この実験装置は,オームの法則を学習する初期に使用するため,電流・電圧の大きさはマイクロアンぺア 計の数値のみ用い,その単位はあまり深入りしない。

(2)この実験装置を用い,電流概念を身につけた後,電流・電圧計の使用法や,電流回路の配線の方法などを 知らせるため,普通の電熱線を用いた実験は,簡単であってもする必要がある。


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