福島県教育センター所報ふくしま No.39(S53/1978.12) -007/030page

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どう生徒もいるので時によっては次のような項目を参考までに示してもよい,

1) 今日の授業のポイントは,授業がはじまってすぐにわかりましたか。

2) 今日学習した内容について,どういうことがわかりましたか。

3) 今日の授業でどういうところがわかりませんでしたか。疑問点が残っていたら書いてください。次の授業の時に説明しますので。

4) 授業中の質問に対して,先生からは,十分わかる説明がありましたか。

5) 何を予習,復習すればよいかきちっとわかっていすますか。

6) 今日の授業で,勉強してわかったという満足感がありますか。もし不満足だとすれば,それはどういう点ですか。

7) 英語の授業で,こうやったらもっとよくなる,あるいは,こうやってほしいと思うことがあったら書いてください。

もちろん上の項目は単なる参考なのでみんな書かせる必要なぞ全然ない。クラスの情況によっては,これらの項目は示さなくとも結構である。ただ大切なことは,教師がなんとかして生徒のみんなにかわるよい授業をしようという熱意をもっていることが生徒に感じられるようにするということである。それによって生徒に書こうという意欲も涌くし,それがやがてはがんぱって英語を勉強しようという気持へ発展していくのである。言い古されたことではあるがやはり  rapport  の問題である。そのことの重要性はどうしても見逃せない。時期と回数だが時間の関係もあってそう度々実施するという訳にもいか在い。体験からいうと,自由に書かせる場合は,学期の最後の英語の時間などは,明日から休みが始まるという解放感もあって生徒のペンも比較的よく走るようである。

6. さいごに

授業診断にはいろいろの方法もあるし,もっとスケールの大きい計画にもとづいて同僚教師の助けをかりながら授業改善の方向を探るというのもある。そういうものに比べれば,私がここに示した生徒の意見を聞いてみようというやり方は,方法も稚拙だしとても授業診断などというような名で呼べるようなものではないかも知れない。しかしながら,なににもましてこの方法を先生方にすすめたいのは,次の3つの理由による。

1) 自分1人でいつでもできる。
2) 授業改善にきわめて有効である。
3) 教師にとって,この上ない励ましとなる。

最後にもう1つ生徒の声を聞いてみよう。

私は高校に入って驚いたことはたくさんありますが,先生の授業もその一つです。普通英語の授業というと,得意じやない私などはいつも受け身的授業になるのですが,先生の場合はちがいました。歌はもちろんですが,これほど生徒のことを考えてくれる授業はないと思います。予習をしてこないのは私たちが悪いのだから,そこでいくらしかられてもしかたがたいのにそういう時「やってこなかったので今やります。」「じゃすぐやりなさい。」こんな会話がとりかわされました。これはとても民主的だと思います。お互いにそれぞれの義務は果たしているし,後味もそれほど悪くありません。私は先生に3年間お習いしましたが,ずっとふり返ってみると,先生はそのつどその状況に合った授業をしてくださいました。授業の進め方を私たちに相談してくれたり,でも特に3年になってからの授業はすばらしかった。よく考えついたと思います。そしてまたよく私たちの状態をつかんでいたと思います。3年生になると受験勉強はあるし……。決して授業をおろそかにする心算はないのですが自然とそうなってしまうのです。普通そんな時でも授業は授業だと割り切ってしまうことだって先生にはできるのです。しかし先生は独自の方法をあみだして調整してくださいました。そういった気持ちが私たちにも通じているのです。先生,ほんとうにありがとうございました。これからも生徒と共に若くあってください。

生徒の書くことだから誇張もあろう。あるいはお世辞もあろう。しかし,教師としては,こういうものにぶっつかると,「よし生徒のためなら,どんなことでもやるぞ。」という心意気のようなよろこびが,身体の中から涌いてくるのを押さえることはできない。教師としてはこれ以上のはげましを他にみつけることはむつかしい。どんなに大規模な公開授業の席上で,偉い助言者からどんなにほめられようと,生徒からのナマの励ましの声にふれた時のよろこぴにはとうていおよばない。教えている生徒にわかってもらえることこそ最上の教師のよろこびではあるまいかと今さらのように思うのである。勿論のこと,授業は絵に描いたように鮮やかにいくものではない。ゴツゴツとした茨の道をあっちにのりあげこっちにぷつかりというのが実態である。そういった日々の授業の実践の中に,「生徒の声を聞くこと,その立場から自己の授業をもう1度みなおしてみること」という視点を是非つけ加えていただきたいと切に願うものである。


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